2134皮膚科研修ノート
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第2章 皮膚科医の基本皮膚科の診察A77膨疹をみることはほとんどなく,膨疹イコール蕁麻疹と考えてよい.h 色素斑,白斑 隆起しない限局性の皮膚色の変化を色素斑とよぶ.実際には,その色調により褐色斑,黒褐色斑,灰褐色斑,青褐色斑などと表現される.色素斑の多くは母斑であるが,炎症や腫瘍の表現である場合もある.逆にメラニンが減少ないし消失して,色が白く抜けたものを白斑とよぶ.i びらん,潰瘍 表皮基底層までの表皮欠損をびらんとよび,真皮,皮下に及ぶ皮膚の欠損を潰瘍とよぶ(図11).j 痂皮,血痂 血液,滲出液,膿汁,壊死組織などが乾燥凝固したもので,びらん,潰瘍などを覆っている.いわゆる「かさぶた」である.特に凝血塊が主体で暗赤褐色を呈するものを血痂とよんで区別することがある.k 角化,過角化 角質が正常より厚くなった状態を過角化といい,胼胝,鶏眼,各種角化症や種々の炎症性疾患,上皮性腫瘍などでみられる.皮膚の生理的現象である角化と区別するためには過角化とよぶのが正確であるが,発音しにくいためもあってか,通常は単に角化と表現する.l リベド(網状皮斑) 網状,樹枝状をなす紫紅色斑(図12).皮膚の血管炎や抗リン脂質抗体症候群などによる血行障害を示唆する皮疹である.m その他膿瘍:真皮から皮下に膿が貯留した状態.亀 裂:いわゆるひび割れ.通常は過角化に続発する.硬 化:真皮の線維化により皮膚が硬くなった状態.瘢痕や強皮症でみられる.萎 縮:真皮,または表皮と真皮の両方が薄くなった状態.乾皮症:皮膚が乾燥して粗糙な状態.苔 癬化:慢性湿疹にみられる変化で,長期の炎症の持続により表皮,真皮が肥厚して「象の皮膚」のようになったもの.深い図11 潰瘍(壊疽性膿皮症)図12 リベド(抗リン脂質抗体症候群)図13 苔癬化(アトピー性皮膚炎)深い皮溝が刻まれ,皮野が形成されている.

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