2135消化器研修ノート
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224c マーキング…………………………… 胃や食道の病変の場合は,処置中病変の境界が不明瞭となるため,必ず事前にマーキングを施行する.マーキングはデュアルナイフの先端でsoft凝固で行う.d 局 注………………………………… 通常の胃病変の場合にはグリセオール®に少量のインジゴカルミンとアドレナリン(エピネフリン)を混合し使用している.また,瘢痕を有するなどの治療困難症例,食道や大腸病変には,粘膜下隆起を保持するため,ヒアルロン酸ナトリウム液を局注液として用いている.e 切開・剝離…………………………… 十分局注を行った部位にデュアルナイフを軽く押し当てて切開を行う.2~3 cm程度切開した後,局注剤による粘膜下隆起が十分なうちに粘膜下層の剝離を続けて行う.粘膜下の線維を確認し,線維をなぞるように剝離を進める(図1-c).ある程度剝離が進んだ段階で粘膜切開の追加を行い,先端アタッチメントを装着しスコープごと粘膜下層に入り込むようにする.これにより剝離する粘膜下層が直視可能となり,安全かつスムーズな剝離が可能となる.f 術中出血……………………………… 切開,剝離を行ううえで術中の出血はほぼ必発である.そのため,安全かつ速やかに治療を終了するためには,この出血をいかにコントロールできるかが重要である.出血の際は,まず出血点を同定し,デュアルナイフで凝固止血する.比較的太い血管からの出血の場合は止血鉗子を用いて凝固させる.動脈性出血でも出血点を正確に同定し,止血鉗子で把持できればほとんどの場合,止血可能である.5偶発症と予防策 ESDにおけるおもな合併症は出血と穿孔である.術中の出血は,前述のように内視鏡的に止血可能である.穿孔は,剝離時に生じることがほとんどである.万一穿孔を起こした場合,送気を控え速やかにクリッピングを行う.全身状態が良好と判断されれば,穿孔部をクリップ閉鎖後に剝離を続行し,切除後に絶食,抗菌薬投与などで保存的治療が可能な場合が多い.しかし,食道や大腸ESDでは,重篤な合併症をきたすこともあり,状況により緊急外科的手術となる場合もある.DON’Ts東邦大学医療センター大森病院消化器内科 大塚隆文,五十嵐良典 ESDは治療の難易度が高く,常に出血や穿孔などのリスクを考慮する.特に食道や大腸においては難易度やリスクも高くなるため,安易な気持ちでESDを施行することは御法度である.

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