2135消化器研修ノート
17/26

第5章 消化管疾患の診療301上部消化管A維芽細胞に感染するため,潰瘍底や肉芽組織からの生検が望ましい.組織学的に核内封入体(フクロウの目所見)を認め,CMV抗体を用いた免疫染色では感染細胞が濃染する.4) 結 核 気管周囲や縦隔リンパ節から食道に穿破する続発性と粘膜に直接感染する原発性がある.縦隔リンパ節結核に続発することが多いため,胸部中部食道に好発する.組織学的にリンパ球浸潤を伴う乾酪性類上皮肉芽腫を認める.c 薬剤によるもの……………………… 薬剤服用後短時間で突然発症する嚥下時の胸痛が典型的な自覚症状である.薬剤が食道に付着停滞することにより発生するため,中部食道に好発する.抗菌薬,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),カリウム製剤などが報告されており,最近ではビスホスホネート製剤やダビガトランによる食道炎が注目されている.d 腐食性物質によるもの……………… 強酸・強アルカリ・農薬などの自殺企図による服用や幼児の誤飲による.おもに液体のため,病変は咽喉頭,食道,胃へと多発性・連続性に認められる.酸は表面に凝固壊死を起こすため深部への浸透は少ないが,アルカリは蛋白質の融解壊死を起こすため,傷害が深部へ及びやすく食道穿孔の危険がある.治癒過程で瘢痕性狭窄をきたしやすく,長期経過で癌が発生することもある.e アレルギーによるもの……………… 好酸球性食道炎は好酸球が食道の扁平上皮粘膜層中に多数浸潤し,慢性炎症と消化管機能障害を生じる.病因は不明だが,食物抗原の刺激による消化管粘膜のアレルギー反応が考えられている.嚥下障害,胸のつかえ,胸痛,胸やけ,呑酸などをきたすため,NERDとの鑑別疾患として注目されている.内視鏡では食道内に白斑,縦走溝,気管様狭窄を認める.診断は生検で好酸球浸潤(>15~20個/HPF)を認めることによる.f 全身性疾患に伴うもの……………… Crohn病,Behçet病,強皮症,天疱瘡,移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)などがある.1) 自己免疫疾患関連 天疱瘡,類天疱瘡は皮疹同様の水疱が食道全体に多発し,直ちに破れて浅い潰瘍を形成,あるいは血豆様病変をきたす.強皮症は食道運動障害のため,嚥下障害や食道炎を起こす.2) Crohn病 全消化管を侵し,食道にも他の消化管と同様にアフタ,小びらんが多発し,高度になると縦走傾向を示す.組織学的にはリンパ球を主体とする慢性炎症性細胞浸潤と非乾酪性上皮肉芽腫を認める.3) Behçet病 腸病変と同様なびらんや,アフタ,打ち抜き潰瘍がみられる.組織学的に慢性活動性の非特異的炎症所見を示す.特異所見を認めないため,診断には臨床症状や他臓器所見を参考とする.4) GVHD GVHDに伴う消化管病変として食道に浮腫と多発発赤,びらん,潰瘍形成が認められる.組織学的には上皮細胞のアポトーシスが観察される.3症 状 胸やけ,呑酸,胸痛はGERDの定型的な症状であり,特に胸やけは最も典型的で頻度が高い症状である.非定型的な症状として呼吸器症状(咳嗽,喘息用発作),咽喉頭症状(喉頭違和感,耳痛,つかえ感,嗄声),歯牙酸蝕(上顎内側)がある. その他の食道炎もGERDと同様の症状以外に,つかえ感,嚥下痛,嚥下障害を伴うことがある.

元のページ 

page 17

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です