2138養護教諭のための発達障害児の学校生活を支える教育・支援マニュアル
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3① 発達障害児の学校生活を支えるために養護教諭ができること  養護教諭の専門性,保健室機能をいかした支援を実施するa.保健室の機能をいかした支援  保健室に来室する児童生徒の多くに発達障害の診断を受けている子ども,または障害をもつ可能性のある子どもたちが存在する.発達障害は身体の問題である2,3)といわれているように,当事者の多くが多岐にわたる先天的な身体問題をかかえていることが報告されている.さまざまな身体の症状や状態が表出される保健室は,おのずと対応することが多くなるであろう.また,自傷行為やパニック,不適応行動やいじめ,不登校などの背景には,彼らのもつ障害特性によって引き起こされる二次障害の可能性も潜んでいる場合があるため,養護教諭がかかわる機会が多い.さらに,保健室は表14)に示したように,保健管理,健康情報センター,健康相談,保健指導,組織活動のセンター的役割等が求められており,さまざまな場面において,発達障害をもつ子どもの支援のために核となる場所であるといえる.そのため,発達障害児の学校生活を支えるための視点や方策を保健室経営計画に明確に示していくことが大切である.b.養護教諭の職務をいかした支援  養護教諭の職務は保健管理,保健教育,健康相談,保健室経営,保健組織活動の五つに分類される.職務全体を通じて支援の視点をもつためには,職務内容全体を通じて支援の在り方を考えることが大切である.表2に職務内容・役割別の支援の視点について示す.保健室でなければ捉えられない情報や知見を提供する 前述したように,保健室では診断されている子どものみならず,障害の疑いのある子どもも多く来室しているため,養護教諭が専門的視点をもち,子どもの症状,状態,背景等,さまざまな角度から分析し,保健室でなければ捉えられない情報を提供していくことが重要である.そのためには,障害の知識を深めるのみならず,多くの子どもたちと触れ合う中で「感性」と「勘」を磨くことが必要である.また,社会の動向表1 保健室に求められる機能① 健康診断,発育測定などを行う場としての機能② 個人及び集団の健康課題を把握する場としての機能③ 健康情報センター的機能④ 健康教育推進のための調査及び資料等の活用・保管の場としての機能⑤ 疾病や感染症の予防と管理を行う場としての機能⑥ 児童生徒が委員会活動等を行う場としての機能⑦ 心身の健康に問題のある児童生徒等の保健指導,健康相談,健康相談活動を行う場としての機能⑧ けがや病気などの児童生徒等の救急処置や休養の場としての機能⑨ 組織活動のセンター的機能等(日本学校保健会:養護教諭の専門性と保健室機能を生かした保健室経営の進め方.11,2004)

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