2138養護教諭のための発達障害児の学校生活を支える教育・支援マニュアル
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  2.応急処置38★用語の解説 ★1:協調運動1) 何かの動作を行う際に,さまざまな筋肉の個々の動きを一つにまとめること1).★2:視空間認知2) 見たものについて情報処理すること,空間を把握できているかどうか.★3:眼球運動 衝動性眼球運動:あるポイントから違うポイントへ視線をすばやくジャンプさせる視線運動. 滑動性眼球運動:ゆっくりと動いているものを視線で捉える力. 両目のチームワーク,左右の眼の連動性のこと(輻輳解散運動:近くのものをみるときに内側に寄り目になる輻輳運動,遠くのものをみるときには目が離れる解散運動).ように練習するように言われていたようである.しかし,Aさんの話を聞く限り,普段からかなり努力して練習している様子であった.養護教諭は,Aさんの話を聞くだけでは,練習していても上手くならない理由や原因がよくわからなかったため,同じ部のBさん(男子)にAさんがどのよう状況で突き指をしてしまうのか聞いてみることにした.すると,Aさんはボールをしっかり見ているが上手くキャッチできなかったり,また,上から飛んで来たボールをキャッチしようとして,ボールが顔によく当たってしまったりするとのことであった. 養護教諭は放課後,バスケット部の練習を見学することにした.Aさんを観察していると確かにボールの方向をしっかり見ており,必死にキャッチしようとする姿が見られた.しかし,身体の動きのアンバランスさや不器用さから,協調運動★1の苦手さ,もしくは視空間認知★2のずれを疑ったのである.担任教師の話によると,学習のときも,板書を写すのがかなり遅く,本読みをしていると読み飛ばしも多いようであった.それらの情報も合わせて,養護教諭はAさんには何らかの発達の偏りの可能性があり,眼球運動★3の弱さも合わせ持っているのではないかと推測した.そのことがきっかけとなりAさんは専門機関に受診することになった.その結果,限局性学習症(SLD)であることが判明した.51 小学校5年生のCさん(男子)は帰宅すると,母親の驚く顔に困惑した.Cさんの鼻の周辺に腫脹がみられ,明らかに鼻骨折が疑われた.母親が本人に聞くとほとんど痛みはないようであった.以前にもCさんは山で転倒し背中を広範囲にわたり擦りむいたことがあったが,全く痛みを感じていないようであった.しかし,本人の話によると,痛みを感じないのではなく,腫れや内出血,変形,水疱など視覚的に捉えることができるけがの場合は痛みを感じるとのことであった.1事 例2

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