2138養護教諭のための発達障害児の学校生活を支える教育・支援マニュアル
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39① けがの手当て  発達障害の身体問題の特性を理解する 発達に偏りのある子どもの多くは,協調運動など体をバランスよく動かす機能が弱いあるいは眼球運動機能が弱い傾向がある.そのため,とっさのときにからだのバランスを保つことがむずかしかったり,一点を集中して見ることや物を正確に捉えることが困難な場合がある.また視空間認知に歪みがある場合,物や人との距離感がうまく取れず,けがをしやすかったり,また,けがをさせてしまうこともある. そのほかにも痛みに対する鈍麻や過敏性が強すぎる傾向があるため,注意が必要である.特に知覚鈍麻な子どもについては,けがに気づきにくいことが推測されるため,重症化をまねきやすい. しかし,視覚から情報が入ることによって重症度や痛みを想像できる場合もある.本事例2のCさんも背中や鼻のけがなど見えない場所のけがには気づいていないが,変形や水疱など視覚で捉えられるようになると痛みがわかるという特性をもつ子どももいる.つまり,視覚で捉えることができる場合は痛みを想像することができ,けがに気づくことができる可能性がある.高橋ら3)の研究においても,けがの症状についての上位3項目に「無意識にケガをしたときには気づけない」,「腕や足などの視界に入りにくい部分は意識できなくて,よくぶつけてしまう」,「すり傷や切り傷の痛みはわかるが,打ち身や捻挫の痛みには気がつきにくい」があげられている. また,鎌塚ら4)の研究においても視覚的に捉えることによってはじめて痛みを感じることができるという特質をもった子どもがいることが報告されている.このように発達障害の子どもがもつ身体問題の特性を十分に理解したうえで,支援内容を考えることが大切である.けがの背景に発達障害に起因した原因がないか,けがの起こった状況を丁寧に分析する① けがの起こった状況を的確に把握する 繰り返されるけがの背景には発達の偏りが起因している場合があるため,注意が必要である.記録と分析によって,判断の感性を磨くことが大切である.② 不快指数の高いときのけが 不快指数の高いときの耐性が弱いため季節,時期によっては,感情のコントロールが困難になりトラブルを起こしやすい.いつ,来室しているか,来室の時期,時間などを分析してみることが大切である.支援のポイント12

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