2138養護教諭のための発達障害児の学校生活を支える教育・支援マニュアル
9/10

47① 保健室登校  信を失う機会に遭遇する場面があり,結果として不登校や保健室であれば登校できるといった状態に陥る可能性も高い.特に発達障害をかかえる子どもたちは,先天的な機能の不具合をもつため,専門的な視点や知識をもったかかわりが必要である.事例から捉える支援のポイント 小学校6年生のAさん(女子)は,小学校3年生から不登校になり,ほとんど登校することはなかった.昼夜逆転の生活が長く,起きているときにはゲームをやっているか,また絵を描いて過ごしていることが多いという.そのため6年生になり,肥満度が29.8(身長152cm,体重70kg)になっていると母親から報告を受けた担任が,養護教諭に支援を求めてきた.「保健室登校ならできるかもしれない」という本人と保護者の意向と子どもを取り巻く現在の情報を収集し,生徒相談部会で報告,相談し,校内体制で保健室登校を受け入れるなどの確認を行った. 昼夜逆転の生活リズムの改善後,1日10分間だけの登校から開始した. 養護教諭の観察により,突然襲う睡魔や一度寝てしまうとなかなか起きないなど,何らかの身体問題が存在する可能性も疑い医療機関受診を勧めた. また,音への過剰な過敏性,食事量のコントロールの困難さ,文字の形や大きさのアンバランスから発達検査も受ける必要があることも伝えた. その後,医療機関にかかり身体的な問題の有無や発達検査を受けた.身体問題に関してはナルコレプシー★1や発達障害の子どもによくある睡眠障害★2を疑われたが,肥満や筋力の低下によって身体が疲れやすいことおよび自閉スペクトラム症(ASD)と診断された.校内委員会で結果を報告するとともに身体問題に配慮した保健室内の環境整備,支援を行い,校内委員会で報告し個別の教育支援計画の作成に参画する.123―13―221事 例★用語の解説 ★1:ナルコレプシー 10代に発症することが多く,発達障害をもつ子どもに発症するケースが多いことが報告されている.おもな症状としては突然の眠気に襲われたり,一度寝てしまうと昏睡状態に陥ったような深い睡眠状態となったりする.また笑ったり驚いたりすると突然全身が脱力してしまったり,入眠時に幻覚をみたりする.原因は明らかにされていないが,薬物療法がおもな治療法である.★2:発達障害と睡眠障害 自閉スペクトラム症をもつ子どもたちの多くに睡眠障害がみられることが報告されている.原因は睡眠リズムを助けたりするメラトニンや興奮を抑えるトリプトファンの調節の不具合によるものとされている.そのため,日中に眠くなったり,授業中に寝てしまったりすることがしばしば起こる.

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る