2154EBウイルス 改訂第3版
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3みられる.一方,Ⅰ型,Ⅱ型では発現しているウイルス遺伝子産物の数が少ない.EBNA—3群が細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の主たる標的であり,Ⅰ型,Ⅱ型の感染状態はCTLの標的になりにくい.EBVの潜伏感染は宿主の免疫との微妙なバランスの上に成り立っており,免疫の破綻はⅢ型EBV感染リンパ球の増殖として顕在化する.EBVはリンパ球トランスフォーム活性によりリンパ腫を生ずるに十分な活性があり,宿主の免疫はそれを抑えていると理解される.発がんにおけるEBVの貢献度はⅢ型で最も高く,Ⅱ型,Ⅰ型と低くなると推察される.たとえば,Burkittリンパ腫においてはEBV感染に加えてがん遺伝子c—mycの発現活性化が必須である. また,上咽頭がん,胃がんでは高頻度でBARF1遺伝子が発現しており,発がんに貢献しているものと考えられる. 従来,EBV感染の診断は血清抗体によっていたが,手技の煩雑性,結果判定の非客観性,しばしばみられる健常人における高抗体価など,多くの問題があった.伝染性単核症やリンパ増殖症の診断には血液中のEBV量を定量PCR法で測定するのが正確性,迅速性,客観性などあらゆる面で優れている.また,EBV関連がんについてはin situ hybridization法によりがん細胞中のEBERを検出するのが最も確実で簡便な方法である. 種々のウイルスに対して抗ウイルス薬が開発されているが,EBVに有効な薬剤はない.臓器移植後リンパ増殖症にはEBV特異的CTLを用いた免疫治療法が有効である. EBVにはウイルス増殖許容性の細胞が存在せず,したがって,変異EBVを用いたEBV遺伝子の機能解析は容易ではない.参考文献・EpsteinMA,etal:TheEpstein—Barrvirus.Heidel-berg,Springer—Verlag,1979.・LongneckerRM,etal:Epstein—Barrvirus.In:KnipeDM,etal(eds):FieldsVirology.6thed,Lip-pincottWilliams&Wilkins,2013:1898—1959.北海道大学 髙田賢藏EBウイルス感染の概要表 1 EBV関連ヒトがんとEBV発現Ⅰ型Ⅱ型Ⅲ型EBV遺伝子―産物   EBNA—1+++   EBNA—2--+   EBNA—3A--+   EBNA—3B--+   EBNA—3C--+   EBNA—LP--+   LMP1-++   LMP2A+/-++   LMP2B-++   BARTs+++   EBERs+++   microRNA+++EBV関連ヒトがんBurkittリンパ腫,胃がん上咽頭がん,NK/T細胞リンパ腫,Hodgkinリンパ腫トランスフォームリンパ球,エイズ・移植後リンパ腫

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