2165熱性けいれん診療ガイドライン2015
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総論6 熱性けいれん重積状態の定義要約熱性けいれんにおいて長時間持続する発作,または複数の発作でその間に脳機能が回復しないものを熱性けいれん重積状態とよぶ.30分以上と定義されることが多いが,持続時間の定義を短くすることが議論されている.乳幼児においてはまだ十分なデータはないが,本ガイドラインでは発作が5分以上持続している場合を薬物治療の開始を考慮すべき熱性けいれん重積状態のoperational definition(実地用定義)とする.国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy: ILAE )による1981年の報告では,てんかん重積状態は「単一の発作が十分な時間持続するか頻回に繰り返し,発作と発作の間に(脳機能の)回復がみられないもの」と定義され,具体的な時間の定義はされていなかった1).なお,てんかん重積状態という用語はてんかん患者以外のけいれん発作に対しても使用される.その後の1993年のILAEの疫学研究のガイドラインにおいて,てんかん重積状態は「30分以上持続する発作,または複数の発作でその間に脳機能が回復しないもの」と定義され,時間の定義が30分とされた2).これは,動物実験で長時間の発作が起きると中枢神経損傷が引き起こされるとの結果から,ヒトにおいても同様のことが起こり得るとの考えからである.熱性けいれんでてんかん重積状態に該当する発作が熱性けいれん重積状態であるが,多くの熱性けいれん重積状態の研究においては1993年のILAEの定義が用いられている3).しかし最近は,時間の定義を10分または5分と短くする意見がある.それは,ヒトにおけるけいれん発作は5~10分以内に自然に止まることが多く,それより長く続く発作は治療を行わなければ30分以上持続する可能性が高くなるため,治療の判断の目安としては10分または5分が適当であるとの考えからである.Lowensteinらは成人および5歳以上の小児において,5分以上持続する単発または発作間に意識が回復しない複数回の全般性けいれん発作をoperational definition(実地用定義)と定義している4).ただし,Lowensteinらは同時に,乳幼児で特に発熱に伴う発作では5分以上(たとえば10~15分)の発作がみられるが十分なデータがなく,まだ実地用定義を定義することはできないとも述べている.DeLorenzoらは226人(成人135人,小児91人)の30分以上の重積発作の患者と81人の総論3解説

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