2171眼科開業医のための診療・連携ポイント30
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糖尿病網膜症の病診連携は,里親制度! 77なり,病状に合わせて様々な治療法を選択することの説明も重要である.もしかかりつけ医と専門医の治療法が異なるような場合,その両者に対する不信感が強くなり,通院中断につながる可能性が高いからである.さらには,通院が数回だけでなく,数年にわたる場合があることも説明されていると,病院での診療が円滑に進みやすい(図3, 図4).DRの病診連携は里親制度と似ている.患者は,数か月~数年間,一時的に病院に通院し,専門的診療を受ける,という気持ちで通院することが必要で,専門医は里子を一時的に預かる里親の存在となればよい.Ⅳ専門医での追加検査と検査に基づく治療❶ FA,全身検査(血液検査,動脈硬化の程度,腎症の状態,頭部検査など)❷ レーザー治療,ケナコルトテノン囊下注射,抗VEGF抗体硝子体内注射,硝子体切除術1“専門医ならでは”の検査 DRでは,出血斑の増加,異常血管など増殖化が懸念される場合には,FAを行い,適切な時期に,レーザー治療を行う.FAは,生食100mLなどで静脈ルート確保し,点滴をしながら側管から造影剤をワンショットで静注する.近くに酸素ボンベや救急カートを置きながら行い,必ず検査前後には血圧を測定し,異常な血圧上昇時は施行しない.異常な血管走行が認められた場合,正常血管か新生血管の評価には,FAが必要である(図5). また,糖尿病患者では,血糖コントロール状態だけでなく,全身状態の検査が必要になる場合がある.片眼に急激に起きた眼虚血症候群などでは内頸動脈狭窄の有無の評価(→頸動脈エコー)(図6),重症の黄斑浮腫(漿液性網膜剝離が強い場合など)では腎症の評価(→血液・尿検査),眼所見では説明のつかない視力低下などでは頭部検査(→頭部MRI,MRA等)などであり,かかりつけ医でも可能であるが病院で行う方が円滑である.病院では,積極的に糖尿病内科,循環器内科,腎臓内科,放射線科などと連携をとり患者の全身状態を把握しつつ,精査・治療を行う.2“専門医ならでは”の治療法 レーザー治療は,(多くの場合はFAのあとに,)無灌流域(NPA)に対して行う(部分凝固).増bc図5 異常血管の評価(56歳男性 HbA1c 7.4%)FAしなければ評価できない所見a:視神経乳頭鼻側に異常血管(黄色矢印).b:FA早期(40sec)無灌流野と隣接する異常血管.c:FA後期(9m30s)異常血管からの漏出はわずかで新生血管ではないと判断.1年経過観察しても,これ以上の進行はしていなかった.a

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