2172骨・軟部腫瘍-臨床・画像・病理 改訂第2版
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2*第1章 総 論I 骨腫瘍1病変の活動性の評価単純X線写真から活動性の高い病変と低い病変を推測することが可能である.しかし,活動性が高い・低いは,良・悪性腫瘍の区別と同義ではない.例えば,急性骨髄炎やLangerhans細胞組織球症は活動性の高い所見をとりうる良悪性中間疾患で,形質細胞腫や腎細胞癌の骨転移は活動性の低い画像所見をとりうる悪性腫瘍である.良悪性の鑑別には,病歴,身体所見,検査データなどの臨床所見や場合によっては病理組織所見を含めた総合的な評価が必要である.a)骨破壊のパターン単純X線写真で骨腫瘍は溶骨型(骨破壊),造骨型(骨形成)および,両者の混合型に分類される.多くは溶骨型を示し,骨破壊のパターン解析は病変の活動性を判定する上で重要である.骨破壊は通常,地図状,虫食状,浸透状の3型に分類され,地図状骨破壊はさらに3つの亜型に細分される1)(図1,2)1)Type I(地図状骨破壊) 1 cm以上の大きさをもつ辺縁明瞭な骨破壊.病巣辺縁や骨皮質の状態によりType IA~Type ICに細分化される.Type I A:地図状骨破壊で,辺縁に骨硬化(硬化縁)をもつ.骨膨隆は1 cm以下に留まる.活動性の低い良性骨病変でみられる.骨嚢腫,軟骨粘液線維腫,軟骨芽細胞腫,内軟骨腫,Brodie膿瘍,線維性骨異形成などが含まれる.Type I B:地図状骨破壊で,辺縁明瞭であるが,硬化縁が欠如(いわゆる打ち抜き像,punched out lesion)するか,1 cm以上の骨膨隆を認める.局所侵襲性病変や低侵襲性悪性骨腫瘍でみられる.骨嚢腫,軟骨粘液線維腫,軟骨芽細胞腫,骨巨細胞腫,多発性骨髄腫,転移性骨腫瘍などが含まれる.Type I C:地図状骨破壊で,辺縁の一部が不明瞭あるいは骨皮質破壊を伴う.侵襲性骨病変でみられ,骨巨細胞腫,骨肉腫,軟骨肉腫,線維肉腫,転移性骨腫瘍などが含まれる.2)Type II(虫食状骨破壊) 5 mmくらいまでの不揃いな小骨融解巣が無数に撒布された骨破壊である.また,地図状骨破壊であっても,1 cm以上の移行帯をもつ虫食状骨破壊を一部にもつものもType IIに分類される.高侵襲性病変でみられ,骨肉腫,軟骨肉腫,悪性リンパ腫,Ewing肉腫などが含まれる.ただし,悪性骨腫瘍以外でも,Langerhans細胞組織球症.急性骨髄炎,急性骨粗鬆症でも認めることがある.3)Type III(浸透状骨破壊) 微小楕円ないし線状の骨融解が,無数に撒布された骨破壊である.骨皮質のHavers管に沿った浸潤性病変を反映している.地図状骨破壊ないし虫食状骨破壊であっても,一部に浸透状骨破壊を伴うものはType IIIに分類される.非常に侵襲性の高い悪性腫瘍でみられ,悪性リンパ腫やEwing肉腫などが含まれる.また,悪性骨腫瘍以外でも,急性骨髄炎,急性骨粗鬆症,副甲状腺機能亢進症でもみられることがある.b)病変の辺縁と移行帯 一般に活動性の低い良性病変は,正常な骨と病変部との境界が明瞭で,病巣の辺縁に硬化縁をもち,正常骨と病変部との移行帯が狭い.例えば,非骨化性線維腫や内軟骨腫のように発育が緩慢な良性骨腫瘍では,母床骨が病変を封じ込めようとする時間が十分にあり,病変との境界において反応性骨形成が行われる.一方,活動性の高い侵襲性病変では,硬化縁がなく辺縁が不明瞭で移行帯が広い.例えば,悪性リンパ腫や急性骨髄炎では,腫瘍の発育や炎症の波及が急速で,母床骨が病変との境界で反応性骨形成を行う時間的余裕がないのである.c)骨膜反応 骨膜反応も病変の活動性を判断する上で,極めて重要である.骨膜反応には比較的活動性の低い病変でみられるものと,活動性の高い病変でみられるものがある2) (図3,4).総 論第1章福田国彦1単純X線写真の読み方

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