2172骨・軟部腫瘍-臨床・画像・病理 改訂第2版
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12*第1章 総 論I CTの特徴 CTはX線を利用した画像であるため,基本的に組織コントラストは単純X線写真と同じである.しかし,断層画像で他臓器と重なりがない,単純写真よりも濃度分解能が高い,容積画像データから任意断面や三次元表示が日常診療でルーチンに行えるなどの利点をもつ.MRIと超音波装置の進歩により,骨腫瘍では単純X線写真の次にMRI,軟部腫瘍では超音波検査ないしMRIが施行されることが多いが,CTにはこれらの検査にない特性があるため,症例を選んでCTが行われることもある.1CTの利点a)単純X線写真よりも優れる濃度分解能 単純X線写真は空気,脂肪,水,石灰化の4段階の濃度分解能をもつが,CTはコンピュータ演算にてX線吸収係数の差をデジタル表示するため,単純X線写真よりも高い濃度分解能をもつ(図1).単純X線写真で捉えにくい軽微な石灰化や脂肪成分を描出できることが骨軟部領域におけるCTの利点である.特に石灰化はMRIで無信号となるためその存在を認識することが難しい.また,緻密な膠原線維,血管腔のow-void,ガス像との鑑別も困難である.一方,脂肪成分はCTで感度よく描出が可能であるが,微量の脂肪を検出する能力はMRIが勝る.b)高い時間分解能と多彩な画像表示法 マルチスライスCTの登場で高い時間分解能で高速撮像が可能となった.広い範囲の高精細画像データが得られることで様々な画像再構成が可能となった. 多断層面再構成(multiplanar reconstruction:MPR)は,任意方向の断層面で画像を再構築する方法である.通常は冠状断像や矢状断像が作製され,解剖学的に複雑な頭頸部,脊椎,肩甲部,骨盤,足関節(図2)などにおける病変の存在診断,進展範囲,性状評価に役に立つ(図3).肩関節では関節面に直交する斜冠状断像や斜矢状断像,仙骨では頭尾方向を傾斜させた斜冠状断像を作製することがある.また,側弯患者の矢状断像では,側弯カーブに沿った断層画像(curved MPR)を作製することで,椎体と脊髄の位置関係を全走行にわたり評価できる.MPRでは画像のCT値はそのまま保持される. 最大値投影法(maximum intensity projection:MIP)は,関心領域の容積データの中で最大のCT値を二次元画像に投影させる方法である.CT血管撮影(CT angiography:CTA)でよく用いられる(図4). 三次元表示法には,SSD法(shaded surface display)とVR法(volume rendering)がある.SSD法は体表の位置情報から立体的な皮膚表面の画像を作製する方法で,顔面奇形などの評価で使われる.VR法は奥行きのある三次元画像データ全てを用いて作製する三次元表示法で,CT値が画像に反映される.三次元画像が質的診断に貢献することは少ないが,術前に治療計画などにおいて立体的な把握が可能となるために有用性が高い.2CTの欠点a)放射線被曝 骨・軟部腫瘍には乳幼児期~思春期に発見されるものが少なくない.成長過程にあり細胞分裂が活発な小児では,成人よりもX線感受性が高く,また,余命が長いため放射線被曝の影響を受けやすい.したがって,特に小児においては,単純X線写真よりも被曝線量の多いCTの使用にあたっては,検査適応を慎重に検討すべきである.b)ヨード造影剤の危険性 腫瘍の性状評価や悪性腫瘍の治療効果判定でヨード造影剤が用いられる.しかし,ヨード造影剤にはまれながら重篤な合併症が報告されている.ヨード造影剤の禁忌としては,造影剤に対する過敏症の既往がある患者と気管支喘息の既往のある患者がある.造影剤による副作用既往のある患者では副作用の発現率は約5倍高く,気管支喘息患者では約10倍高いとされている.また,その他の禁忌として,重篤な甲状腺疾患患者がある.ヨード総 論第1章福田国彦2CTの読み方

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