2174眼科研修ノート 改訂第2版
10/12

500薬事承認を受けていない薬剤や医療機器を,医師個人の責任で薬監証明を取得の上,輸入し使用する場合は,保険診療としては認められない.e 混合診療の禁止……………………… わが国の保険診療においては,医療に直接かかわる部分はすべて保険によって賄われることが基本的な考え方となっている.したがって,診療報酬点数上定められていない手術や検査,薬価の定められていない薬剤の薬剤料を保険診療に加えて,患者から徴収することや,診療報酬請求において審査支払機関である社会保険診療報酬支払基金に査定を受けたため,保険医療機関が支払いを受けられなかった金額を患者に別途請求することはできない.これらは保険医療機関及び保険医療養担当規則第5条及び第5条の2の規定に基づいている.たとえば保険で認められていない手技を行うために入院して,入院基本料だけを請求し,認められていない手技だけを患者の負担で徴収することも認められていない.ただし,保険外併用療養費等,別途請求が認められているものもある.f 特定の保険薬局への患者誘導の禁止 患者に対して,「特定の保険薬局において,調剤を受ける趣旨の指示」や「指示等を行うことの見返りとして,保険薬局から金品その他の財産上の利益を受けること」は保険医療機関及び保険医療養担当規則第2条の5及び第19条の3において禁止されている.G 経済上の利益の提供による誘引の禁止……………………………………… 一部の保険医療機関等において,マンション等の集合住宅等に居住する患者の紹介により,その患者紹介料を支払った上で,訪問診療等を行っている事例があったことから,平成26年度の改正で新設された.「保険医療機関は,事業者又はその従業員に対して,患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより,患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない」(保険医療機関及び保険医療養担当規則第2条4の2).2保険診療における忘れがちな基本 保険診療においては,診療報酬点数を算定することになる.請求においては,その算定要件をクリアしてはじめて保険請求できるのであり,要件を満たさない請求は不正請求と疑われてもしかたがない.そこで,以下に保険診療の基本的な考え方を整理してみる.a 診療録について……………………… 診療録が診療報酬の根拠となることは理解されていると思う.しかしその記載となると自信をもてる医師はどれくらいいるかを,胸を張って答えられないのは寂しい限りである.しかし,このことは臨床医にとっては非常に重要なことである.また,精神論からこのことを訴えているのではなく,事実に基づいて必要事項を十分に記載するということは,医師法第24条に「医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と規定されており,医師の義務となっている.したがって,これは,医師として求められる約束事である.また,診療録を十分に記載していることは,医師の行った医療行為についての疑問が出た場合に,自分の判断や根拠,その妥当性を証明するものとなり,医師の身を守る重要な書類となることも忘れてはいけない.診療録はメモではないので,必要な記載が乏しいことは診療が行われていないと解釈されてもしかたがない.また,他の医師が見てもわからないような略号や独自の表記はさけるべきである.不名誉な指摘をされ,無用な中傷を受けることのないようにするためにも診療録

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る