2174眼科研修ノート 改訂第2版
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4262アンチエイジング医学のパラダイムシフト 2008年5月,CRミミックリー(カロリーリストリクションの代替)として研究されてきた「レスベラトロール」が,ミトコンドリア脳筋症のオーファンドラッグとしてFDAの認可を受けた.レスベラトロールは,カロリーリストリクション仮説に基づいて発見された重要な酵素であるサーチュインを活性化するフードファクターである.薬というよりは食品であり,近年,一部のドクターたちがまだヒトでのエビデンスはないものの基礎研究および動物実験のデータから,アンチエイジング医学的な視点で健康長寿のために摂取を試みてきたものである.それがいくつかのエビデンスをもとに治療薬としてFDAが認可したのだ. ミトコンドリア脳筋症は,ミトコンドリアの異常によって起こる難治疾患であり,遺伝子によって規定されている.すなわち遺伝病だ.しかしながらこれらの疾患は加齢とともに進行する.加齢が大きなリスクファクターになっているわけだ.そこでレスベラトロールを用いたところ改善が認められた.遺伝疾患であっても網膜色素変性症などにもみられるように,若いときはあまり問題がないが年齢とともに進行し悪化する疾患が多い.このような難治性の疾患にアンチエイジング医学が応用され始めたことは,現代の医学に新しい潮流が生まれようとしている一つの動きととらえることができる.3サイエンスに基づいたアンチエイジング医学 現代の医学はエビデンスに基づいて行われる.疾患メカニズムに対する治療戦略が存在し,それに対して動物実験を経て,ヒトでの治療データが蓄積されて初めて一般の治療法として使われるようになる.疾患治療の場合はエンドポイントを“疾患の治癒”におくことができるので,比較的エビデンスを得やすい.ところが,アンチエイジング医学の場合には,“疾患治療としてのアンチエイジング医学”であれば前述したレスベラトロールのようにFDAの認可を得られる程度のエビデンスを得ることもできる.EPAの摂取は炎症をコントロールし,酸化ストレスとの悪循環を断つために図1 アンチエイジング医学がより積極的かつ合理的な予防医学となるエイジングは各疾患の最大リスクなのでここに介入することによってたくさんの疾患の予防および治療を同時に行える可能性がある.これがアンチエイジング医学の基本的な戦略である.エイジング若くて健康アンチエイジング医学による介入ドライアイ加齢黄斑変性緑内障糖尿病性網膜症老視がん糖尿病脳血管障害動脈硬化薄毛加齢による変化

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