2174眼科研修ノート 改訂第2版
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499眼科医に必要な社会的知識と制度B 保険診療は,健康保険法,国民健康保険法,船員保険法により定められているが,本項では,健康保険法を基本にして解説する.ここで最も重要なことは,保険診療を行うためには,医師が自らの意思により保険医の登録を行う必要があること,すなわち,健康保険法に基づく医療保険制度の決まりごとについて,その遵守を公法上の契約として約束しているという点である.したがって,保険医は,保険診療上の決まりごとを知らなかったという言い訳ができないことになる.研修医といえども例外ではない.そこで,保険診療を行う上で,医師が絶対にしてはいけない項目がいくつかあるので,以下にその概要を記載する.1保険診療における禁止事項a 無診察診療の禁止…………………… 医師法第20条の規定により,診察をしないで,治療を行ったり,診断書や処方箋を交付してはならないとされている.患者が病院や医院を受診して,医師の診察を経ずに点眼薬などの処方箋が渡されたとすれば,これは無診察投薬となり処分の対象となる.b 健康診断の禁止……………………… 保険医療機関及び保険医療養担当規則第12条の規定により,診療は,医師としての診療の必要性が認められる疾病又は負傷に対して的確な診断をもとにして患者の健康の保持増進のために妥当適切に行わなければならないとされている.また,同規則第20条には健康診断は療養の給付の対象として行ってはならないとも規定されている.疑うべき疾病がないのにCTやMRIによる画像診断を行って保険請求することは,健康診断目的の検査を行ったと解釈されてもしかたがないといえる.c 濃厚(過剰)診療の禁止……………… 検査,投薬,注射,手術,処置等は,診療上の必要性を十分に考慮した上で,段階を踏んで必要最小限に行う必要があると保険医療機関及び保険医療養担当規則第20条に規定されている.保険医療機関のオーダリングシステムにおいて,必要性の有無にかかわらず,一定の検査を行うことが当然のようにプログラムされている状況は生じていないだろうか.d 特殊療法・研究的診療等の禁止…… 医学的に十分に確立されていない「特殊な療法又は新しい療法等」の実施,「厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物」の使用,「研究の目的」による検査の実施は保険診療において認められていない.これらは保険医療機関及び保険医療養担当規則の第18~20条に規定されている.ただし,「先進医療」による一連の診療と「治験」による薬剤の投与およびこれに伴う一連の検査は例外的に認められている. たとえば,先進医療や治験に該当しないDOsB 眼科医に必要な社会的知識と制度日本における医療保険制度3 保険診療を行うためには保険医登録が必要である. 保険診療では,無診察診療,濃厚診療,特殊療法・研究的診療,混合診療が原則禁止されている. 診療録と傷病名の記載に注意を払おう. 診療報酬点数はカルテ記載とリンクしている.

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