2177血液科研修ノート
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601基本的な考え方 リンパ節の腫脹は本来,生理的な免疫反応として誰にでも起こり得る現象であり,存在すること自体が異常所見というわけではない.リンパ節腫脹が臨床上問題になるのは,原因が明確でないまま持続する場合,サイズが増大したり数が増加する場合,発熱や盗汗など他の身体症状が伴う場合などである.リンパ節腫脹に遭遇した場合,まずそれが生理的な範疇か病的なものかを判断し,異常であることが疑われる場合,その最適な診断方法を検討する(図1). 例えば,結核性リンパ節炎が疑われる場合は,インターフェロンγ遊離試験が結核症の診断において参考となる簡便な検査であり,また喀痰・胃液検査などの侵襲の少ない検査法で培養・菌種同定に適した検体を採取することも可能である.リンパ節生検は患者に対する身体的侵襲のみならず,医療従事者の結核菌曝露にも十分配慮する必要があるため,検査の優先順位としては低い. このように,リンパ節腫脹の診療においては身体所見や血液データを収集し,鑑別すべき病態に基づき,最も診断的価値が高図1  リンパ節腫脹の診療の進め方リンパ節腫脹に遭遇した場合,まずそれが生理的な範囲内のものか,病的なものかを判断する.病的なリンパ節腫脹と考えられる場合,生検以外に適切な診断方法がないかどうか,また生検が必要と考えられる場合も,リンパ節の生検が最適な診断方法かを検討する必要がある.腫脹が生理的範囲内・あるいは原因が明らかで特別な検査を要しない(局所感染に伴う所属リンパ節腫脹,アトピー性皮膚炎に伴うリンパ節腫脹)病的なリンパ節腫脹で精査を要する(サイズが大きい,短期間で増大,原因不明のまま長期持続,他の身体症状を伴うなど)原発巣の検索を優先(リンパ節以外の腫瘍性疾患の転移が疑われる場合.胃癌,肺癌など)リンパ節生検が必要(悪性リンパ腫,サルコイドーシス,Castleman病,IgG4関連疾患など)生検を行わず診断可能(EBウイルス・CMV:ウイルス抗体・核酸検査,結核症:インターフェロンγ遊離試験,喀痰・胃液培養,PCR検査)病理診断が必要(悪性腫瘍が否定できない)病的なリンパ節腫脹大どうかリンパ節腫脹,肝脾腫の見方1 リンパ節腫脹はまず,生理的な免疫反応として生じているものか,精査を進めるべき病的なものかを判断する. 年齢や病歴,付随する身体症状,画像所見などから,リンパ節腫脹や肝脾腫の原因を推測する. 鑑別すべき病態を考えた上で,最も診断的価値が高く,侵襲が少ないと考えられるアプローチにより診断を行う.DOs

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