2177血液科研修ノート
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書類の書き方第7章 書類の書き方4851プロブレムとプロブレムリストの定義 一般的に,プロブレムリストといわれているものには様々な形がある(図2).総合プロブレム方式における「プロブレム」とは,患者の病気(疾病)のことである.そして「プロブレムリスト」とは患者の全プロブレムの一覧表であり,医師の専門科や興味関心にかかわらず,ここにあげた病気以外には患者の病気はないといえるほどに網羅されたものである.2基礎資料とは プロブレムリストを作成するためには,患者の全疾病についての症候を把握する必要があり,患者に生じている症候を定型的・網羅的に収集する必要がある.定型的・網羅的に収集された患者の症候のことを基礎資料とよぶ.総合プロブレム方式では,基礎資料を「病歴」「過去の資料」「身体所見」「スクリーニング検査所見」の4つに分類している.a 病歴…………………………………… 病歴はさらに,「主訴」「現病歴」「既往歴」「家族歴」「生活社会歴」に分けられる.「主訴」とは患者の受診・入院するに至った主たる動機であり,原則一つの症状によって表現される.「現病歴」とは,患者からみた患者の病気の歴史的記述である.医療者の目線ではなく,患者からみた病的な経験を時間軸に沿って記載されたものである.患者の体験を,読み手がありありと追体験できるような現実感のある現病歴が望ましい.また,後述する「既存症」についても,現病歴の冒頭に記載しておく.「既往歴」とは,既往症についての簡単な記述である.総合プロブレム方式においては,過去にはじまって過去に終わった病気を「既往症」,過去にはじまって現在も続いている病気を「既存症」と区別する.既往症については既往歴の欄に,既存症については現病歴の欄の前半に記載する.「家族歴」は通常,三親等程度の記載で十分であるが,遺伝性疾患などではさらに詳しい記載が必要である.「生活歴」には,職業歴,生育歴,ADL,嗜好(特に飲酒・喫煙)などについて必要に応じて記載する.b 過去の資料…………………………… 「過去の資料」とは,過去の医療機関での記録である.受診してきた医療機関から情報を取り寄せたり,健康診断・人間ドックの受診歴があればそれを入手したりして記録する.画像や病理検査については,直接観察し記録する.なお,「過去の資料」とは医療者から観察した患者の現象についての記録であり,「病歴」と「過去の資料」は観察者の視点が全く異なるため,これらの情報図2  プロブレムリストの例#1CRP高値#2発熱#3皮疹#4糖尿病#5ALP高値(目立った)症状・所見ベースのリスト#1呼吸#2循環#3意識#4感染症#5栄養器官ベースのリスト#1糖尿病#2高血圧症#3冠動脈狭窄症#4胃癌(術後)#5全身性リンパ節腫大疾病ベースのリスト

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