2181LEVEL UP リウマチ診療のための関節エコー活用ガイド
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DCEFBA関節リウマチ診療の基礎知識1A.超音波を取り入れた関節リウマチ診療の基礎知識Ga疾患概要・臨床症状 関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は日常診療で遭遇することが多い関節疾患の1つであり,通常は慢性多発性関節炎を呈する.RAの臨床的特徴は1987年米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)のRA分類基準(旧基準)の項目によく示されている.すなわち,朝のこわばり,3関節以上の関節炎,手指関節炎,対称性関節炎,リウマトイド因子(rheu­matoid factor:RF)陽性,手指関節X線上の関節近傍の骨粗鬆症や骨びらんなどである.RAはその名称にあるように,炎症の首座は滑膜関節であるが,血管炎に起因する関節外症状を伴うリウマトイド血管炎(rheumatoid vasculitis)を呈する亜型もある.RAにおけるRFの陽性率は高いが必ずしも特異的ではなく,最近はRFと比較して同等の感度で,かつ,特異度が高い抗シトルリン化蛋白 /ペプチド抗体(anti-cyclic citrullinated protein/peptide antibody:抗CCP抗体またはACPA)が診断において重要視されている.RFやACPAなどの自己抗体はRA発症の10年以上前から陽性であり,発症直前には急速に陽性率および抗体価上昇が観察される1).自己抗体陰性RAは陽性RAと発症機序が異なる可能性があり,実際,治療への反応性,疾患の進行も異なる.一般的に進行性のRAは自己抗体陽性である.b疫学・病因・分類 有病率は1%前後,男女比は1:3~5で,働き盛りの30~50歳代の女性に多い.自己抗体陽性RAでは図1のような発症経過が想定されている2, 3).すなわち,遺伝要因をもつ健常者が,喫煙や歯周病などの環境要因に曝露されると,関節外で自己抗体産生が起こる.ただしこの時期には臨床および画像上ともに滑膜炎は存在しない.進行するにつれ画像上滑膜炎が出現,そして臨床的関節炎を認めるようになり,ついに RAと分類(診断)される. RAの遺伝要因の解析においてもゲノムワイド関連解析(genome wide association study:GWAS)が進んでいるが,HLA-DR遺伝子の関与が最大で,10〜30%が説明可能とされる4, 5).欧米人ではHLA-DRB1*0401,*0404,*0101などのアリル,アジア人では*0405,*0901などのアリルであり,人種差が存在する.HLA-DRβ鎖において抗原と結合する超可変領域の第70〜74アミノ酸残基が共通の配列を有しており,共通エピトープ(shared epitope:SE)とよばれる.SEは病因自己抗原提示に関係する可能性があるとして,SE仮説が提唱されている.HLA以外では,蛋白シトルリン化にかかわるPADI4(peptidyl arginine deiminase 4),T細胞やB細胞受容体シグナルを制御するPTPN22(protein tyrosine phosphatase non-re­ceptor type 22),FCRL3(Fc receptor-like 3),BLK(B-lymphoid tyrosine kinase),T細胞抑制や刺激にかかわるcytotoxic T-lymphocyte anti­gen 4(CTLA4),シグナル伝達やT細胞分化にかかわるSTAT4(signal transducer and activa­tor of transcription 4),Th17細胞表面に高発現しているケモカイン受容体CCR6(C-C chemokine receptor 6)の遺伝子などが報告されている4, 5).しかしながら,SEはACPA陰性RAでは関与し関節リウマチ診療の基礎知識

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