2181LEVEL UP リウマチ診療のための関節エコー活用ガイド
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2DCEFBAGていない報告があり6),ACPA(自己抗体)陽性RAと陰性RAにおける遺伝要因の詳細な解析が待たれる. 環境要因としては喫煙と歯周病が注目されている7, 8).喫煙者の気管支肺胞洗浄液にはPAD酵素とシトルリン化蛋白の増加を認め,喫煙はHLA-DRB1* SE依存性にACPA産生を誘導する.歯周病の原因菌であるPorphyromonas gingivalisはPADI4を発現しており,歯周病もACPA産生を誘導する環境要因として考えられている.その他,嗜好品ではアルコール摂取はRA発症リスクを低下させ,コーヒー摂取はRA発症リスクを高める可能性がある. 臨床分類(診断)基準は長らく前述の1987年ACR基準が使われていたが,この旧基準は進行期RAをもとに作成されているため,早期症例の分類(診断)に適しているとは言いがたかった. 2010年にACRおよび欧州リウマチ学会(Europe-an League Against Rheumatism:EULAR)は,早期のメトトレキサート(methotrexate:MTX)導入が望ましい持続性びらん性関節炎を抽出する目的で,新しい分類基準を作成した9, 10).この分類基準では,1関節以上の滑膜炎が存在し,かつ鑑別の結果他疾患で説明できない症例を対象にスコアリングを行い,10点満点中6点以上でRAと分類される.スコアリングは4項目,すなわち罹患関節(特に複数の小関節),自己抗体陽性(RFあるいはACPA),炎症反応陽性〔CRPあるいは赤血球沈降速度(ESR)〕,罹病期間(6週間以上)で構成される(図2)10).なお,鑑別すべき他疾患とは,パルボウイルスや風疹ウイルスなどウイルス性関節炎,Sjögren症候群や全身性エリテマトーデスなどのリウマチ性疾患,乾癬性関節炎,変形性関節症などがあげられる.c治療計画 RAの治療はここ20年間で大きく進歩した.1999年以降MTX,インフリキシマブ(inflix-imab:IFX),MTX用量拡大と,順次保険適用が承認され,IFX以降も有効な生物学的製剤が次々と開発されている.また,早期から目標を設定した治療(treat to target:T2T)(図3)11)が推図1 自己抗体陽性RAの発症経過4035302520151050ORNo smokeNo SESingle SEDouble SE55.877.40-9p.y.10-99p.y.20-p.y.Ref遺伝要因(HLA-DRB1*SE,PADIなど)環境要因(喫煙,歯周病,ウイルス感染など)関節リウマチ(分類基準を満たす)自己抗体産生(肺,リンパ節,歯肉,腸管)関節炎(分類不能)subclinical滑膜炎無症状時間的経過HLA-DRB1*SE喫煙歴関節リウマチ発症リスクSE保有が多いほど,喫煙年数が長いほど発症リスクは高くなる.

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