2181LEVEL UP リウマチ診療のための関節エコー活用ガイド
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DCEFBA2.早期診断における超音波の有用性59E.関節リウマチの診断と治療における実践活用術G 本項では前項EULARリコメンデーション1)(p.57)の「診断に関するリコメンデーション」(1,2)および「炎症と関節破壊の検出に関するリコメンデーション」(3,4)を念頭に,関節リウマチ(RA)早期診断における超音波の活用法について概説する.a関節炎および関節破壊の検出 超音波の特徴として,骨表より浅部における分解能が高く同部の病変検出に優れること,さらにパワードプラにより活動性滑膜炎でみられる著明な血管新生を反映する肥厚滑膜内の異常血流を検出できることがあげられる.RA診断における重要な画像所見として滑膜炎と骨びらんがあるが,超音波はこれらを高感度かつ早期に検出することができる.実際に,超音波は診察と比べて2倍以上の高い頻度で関節炎(滑膜炎)を検出できる2).また,超音波により関節滑膜炎のみならず,腱鞘滑膜炎や滑液包炎,腱付着部炎を分別し検出することができる.特に腱鞘滑膜炎はRA発症早期から認めることがあり,重要な所見の1つである.さらに,超音波は関節破壊,特に骨びらんを単純X線と比べて早期に検出することができる3).したがって,RA早期診断の補足として超音波の特徴を活かすべきである.bRA診断精度の向上 2010年RA分類基準4)は,持続性関節炎あるいは骨びらんをきたす可能性が高く,治療介入が必要な症例を早期に同定することを目的としている.この分類基準を用いる場合,臨床的な関節評価を正確に行う必要があり,その確認のために超音波やMRIを用いてもよいとされている.2010年RA分類基準における超音波の活用法を以下に示す. 最初のステップとして,1つ以上の臨床的滑膜炎(腫脹関節)の存在が必須である(図1❶)が,前述のように超音波は滑膜炎を正確に検出することに長けている.また,RAにみられる炎症性関節腫脹と鑑別が必要な変形性関節症(osteoarthri-tis:OA)の骨性関節腫脹を除外するのにも役に立つ.具体的には,OAでは関節裂隙狭小と骨棘を伴う軽度の滑膜肥厚あるいは滑液貯留を特徴とし,通常滑膜内の異常血流は目立たない.ただし,滑膜炎はあくまで非特異的な所見であるため,次のステップとして滑膜炎をきたす他の疾患を除外しなければならない. 鑑別疾患(図1❷)に関しては他項「F.鑑別を要する疾患の超音波所見」(p.94)に譲るが,この点においては問診,診察,血液検査,画像検査などによる包括的な鑑別診断が必要である.ただ,超音波の特徴的な所見により鑑別できる疾患として前述のOAや結晶誘発性関節炎などがある.尿酸ナトリウム塩やピロリン酸カルシウム(CPPD)といった結晶の沈着は,超音波によりわずかなものも比較的容易に検出できる. 最後のステップとしてスコアリングを行う(図1❸)が,罹患関節数により最高5点が加算されるため,診察技術に左右される可能性がある.前述のように超音波は診察よりも高感度に滑膜炎を検出できるため,超音波を併用することでRAの診断感度を向上できると思われる5).早期診断における超音波の有用性2

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