2191基礎からわかる女性内分泌
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64ノイドが多く合成され,その一部がエストロゲン作用を示す(フィトエストロゲン).代表的なものにイソフラボン類に属するダイゼインやゲニスタインがある.ダイゼインが示すエストロゲン作用はダイゼインそのものの作用ではなく,腸内細菌によりダイゼインを原料にして作られるエクオールの作用である.エクオール産生菌を腸内にもたない非エクオールプロデューサー(日本人の60%,欧米人の75%)はダイゼインをエクオールに転換できないので,大豆イソフラボンを摂取してもエストロゲン効果(更年期障害症状の消失や骨代謝改善効果)が発現しない. スチルベン系化合物も非ステロイドで,その一部がエストロゲン作用を示す(ジエチルスチルベステロール,ヘキソステロールなど).エストラジオールの3位に相当する位置に水酸基をもつ芳香環が対称性に存在している化合物が多い.ジエチルスチルベステロールはエストロゲン作用が強く,胎児被曝により腟癌を発生させたことで有名である.クロミフェンもスチルベン構造を有する.サーチュイン遺伝子の活性化で有名なレスベラトロールは天然の化合物で,エストロゲンあるいは抗エストロゲン作用を示す. 17α位にエチニール基(HC≡C-)が導入されたエストロゲン(メストラノール,エチニールエストラジオール)は,強い生物活性を示す. ヒトでは,アンドロゲンを基質としてアロマターゼによりエストロゲンが産生される(図2).アロマターゼは,アンドロゲン(炭素数19個)のメチル基(C19位,A環とB環の核間に存在)に3回にわたって酸素原子を導入し,最終的にC19位炭素をギ酸として取り除く.この結果,炭素数が18個に減じ,A環に二重結合と水酸基(3位)が導入されて芳香環となり,エストロゲンが生成される.この反応では,酸素分子3個とNADPH 3個が消費され,ギ酸と水が生成される. 基質となるアンドロゲンが,アンドロテンジオンの場合は3位に水酸基が1つ導入されてエストロンが産生される.基質がテストステロンの場合は,(すでに17β位に水酸基が存在しているので)産生されるエストロゲンは水酸基2つを有するエストラジオールとなる.エストロンとエストラジオールは17位水酸化活性をもつ酵素により相互に転換される(図2).この相互転換は,不活性型‒活性型間の変換であり,エストロゲン作用の強度調整機構としての意義をもつ.さらに,エストロンは硫酸抱合を受ける.硫酸抱合体は,不活性型で血中に比較的大量に存在し,スルファターゼ活性をもつ細胞ではエストロンを経てエストラジオールに逆転換されてエストロゲン作用を示すことができる(図2).したがって,エストロゲンサルフェートは,エストロゲンのリザーバーとしての役割をもつ. エストロゲンは,硫酸抱合のほかグルクロン酸抱合を受けて極性が増し,尿中に排泄される(図2).肝臓で複数のチトクロームP450代謝酵素により2位,4位,16位などに水酸化を受けたのち抱合される. 卵巣の顆粒膜細胞は,アロマターゼとともに17β‒hydroxysteroid dehydrogenase type 1を発現しており,エストラジオールを産生する.これに対し,子宮内膜は,卵胞期にエストラジオールの作用を受けて増殖するが,分泌期に入ると17β‒hydroxysteroid dehydrogenase type 2を発現してエストラジオールを活性のより低いエストロンに転換する.この結果,エストラジオールの作用は弱まり,内膜は黄体ホルモン作用により傾く.ヒトでは黄体期にも卵胞期に匹敵するエストロゲンが血中に存在するにもかかわらず子宮内膜は分泌期像を示すが,これには内膜局所での不活化が関与している.このような末梢組織によるホルモン作用の調節は,従来標的臓器とよばれていたエストロゲン反応性組織が,合成・代謝エストロゲンの排泄と活性調節

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