2191基礎からわかる女性内分泌
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165疾患・症候第4章 ・ 卵胞発育不全による卵巣性無月経を呈する疾患である. ・ 卵胞から分泌されるエストロゲンが欠乏し,のぼせ,発汗などの更年期症状を呈する. ・ 原因は不明のものが多いが,ターナー症候群などの染色体異常,自己免疫異常,卵巣手術や化学・放射線療法などによる,急激な卵胞の減少に起因する.1)卵胞の構造とホルモン産生 卵胞は卵子を排卵させる最小構造で,卵子(卵母細胞)とそれを被包する卵巣体細胞からなる.体細胞としては顆粒膜細胞,莢膜細胞があり,それぞれエストロゲン,アンドロゲンを産生する.これらのステロイドホルモンはコレステロールを原料として各細胞が協調しながらで段階的に産生される.このメカニズムはtwo cell two gonadotropin theoryとよばれ(図1),莢膜細胞内に取り込まれたコレステロールがLHの作用によりプロゲステロンとなり,次いでアンドロゲンに合成され,顆粒膜細胞に移送される.顆粒膜細胞ではアンドロゲンがFSHの作用によりアロマターゼ酵素によって芳香化を受けエストロゲンが合成される.2)卵胞発育 卵胞は卵巣の局所因子および下垂体由来のゴナドトロピン(FSH,LH)により発育し,原始卵胞,一次卵胞,前胞状卵胞,胞状卵胞,成熟卵胞(グラーフ卵胞)と段階的に発育する(図2).ヒトの場合,原始卵胞から排卵前卵胞に至るまで,約6カ月の期間を有する.原始卵胞から排卵前卵胞に至る卵胞発育はゴナドトロピンの依存性により3段階に分類される1). 第1段階は,原始卵胞から前胞状卵胞に至るまでであり,この時期はゴナドトロピン非依存性に卵胞が発育する(図2:ゴナドトロピン非依存性).この時期の卵胞はおもに卵巣内の局所因子により発育が促進される.局所因子としては,GDF‒9,BMP‒15,EGF,TGFAなどが知られている.出生時までに第一減数分裂前期の複糸期まで進んだ卵母細胞は,原始卵胞の状態で減数分裂が停止し休眠原始卵胞の状態で卵巣内に保存される.出生後,性周期が確立すると,約1,000個/周期の休眠原始卵胞が活性化され,休眠状態から解除されて発育を開始し,一次卵胞となる.多数ある原始卵胞の中から,一部の卵胞が選択され活性化する機構はこれまで解明されていない2). 前胞状卵胞から直径2 mmを超える胞状卵胞までは第2段階のゴナドトロピン感受性とよばれる時期で(図2:ゴナドトロピン感受性),ゴナドトロピンの月経周期変化により影響を受けず,基礎値のゴナドトロピンに依存し発育を続ける.直径2 mmを超えた胞状卵胞は,ゴナドトロピン依存性の第3段階に入り(図2:ゴナドトロピン依存性),月経周期に伴うゴナドトロピンの上昇により急速に発育し,排卵前卵胞となる.3)卵胞活性化と早発卵巣不全 原始卵胞の数は胎生期にピークとなるが,出生以降に少なくとも体内において原始卵胞は増加せず,加齢とともに減少していく.思春期の頃には数十万個の原始卵胞が卵巣内に存在しているが,上述のように休眠状態にある.卵巣内の残存原始卵胞の数が約1,000個以下となると,定期的な原始卵胞の活性化が起こらなくなり,病態第4章 疾患・症候早発卵巣不全の病態と診断河村和弘13

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