2200内分泌クリニカルパール
3/6

 下垂体Ⅰ解説◆産褥期に下垂体機能低下症を合併したトルコ鞍腫瘤があればリンパ球性下垂体炎を強く疑うべきである.本患者の頭部MRIにおいて.下垂体柄の下半分を巻き込む均一に造影される前部トルコ鞍腫瘤を示す(図2,矢印).リンパ球性下垂体炎の治療の選択肢は欠損したホルモンを補充し,外科的介入を避けることである.したがって本患者で経蝶形骨洞下垂体手術へ進む(解答C)のは適切な次のステップとは言えない.炎症性プロセスは通常自発的に消褪するもので,外科的な腫瘍減量術を必要としない.患者には別の下垂体ホルモン欠損の出現や腫瘤効果の進展の経過観察が必要である.MRIにて腫瘍の拡大が証明できる限られた症例では治療用量のグルココルチコイドの短期間治療を考慮できる.◆胚細胞腫は若い女性で下垂体柄腫瘤として発症しうる.したがってαフェト蛋白やβ-hCGの測定(解答A)は本患者では合理的ではあるが,あげられたオプションの中では最良の解答ではない.◆ランゲルハンス細胞組織球症も下垂体柄腫瘤の鑑別にあげられ,骨サーベイ(解答B)は本診断に役立ちうる.しかし分娩後という設定ではリンパ球性下垂体炎が最も可能性が高い.◆尿崩症は下垂体柄腫瘤の患者ではまれではない.しかし本患者は多尿や多飲もなく早朝スポット尿は良好な濃縮能を示している.患者は2次性副腎不全があるために軽度の尿崩症はマスクされ得る.患者の尿崩症の徴候と症状については注意を払うべきではあるが,この時点では標準的な水制限試験(解答E)は必要ない.◆過去20年にわたるMayoクリニックでみた152例の下垂体柄病変のうち,49例(32%)は腫瘍性,30例(20%)は炎症性,13例(9%)は先天性奇形,そして60例(39%)は原因不明であった.尿崩症は43人(28%),また少なくとも一つの下垂体前葉ホルモン欠損は49人(32%)に診断された.2次性性腺機能低下症が最も一般的なホルモン欠損症であった.正解:D●文 献・Di Iorgi N, et al.:Pituitary stalk thickening on MRI:when is the best time to re-scan and how long should we continue re-scanning for? Clin Endocrinol(Oxf) 2015 Mar 11.・Turcu AF, et al.:Pituitary stalk lesions:the Mayo Clinic experience. J Clin Endocrinol Metab. 2013;98:1812-1818.・Yoon SC, et al.:Clinical and radiological features of pituitary stalk lesions in children and adolescents. Ann Pediatr Endocrinol Metab 2014;19:202-207.1下垂体柄病変の鑑別診断は極めて広範で,原発性脳内および転移性悪性腫瘍を含む.2下垂体柄病変患者では下垂体前葉・後葉の両ホルモンの欠損症を評価する必要がある.3 下垂体柄病変患者の初期検査は臨床的背景と所見に基づいて行うが,特にいくつかの疾患(例:先天性奇形,リンパ球性下垂体炎,胚細胞腫,サルコイドーシス,ランゲルハンス細胞組織球症,転移性疾患)はすべての患者で考慮する必要がある.4 下垂体柄病変で良性疾患の可能性が最も高ければ(例:リンパ球性下垂体炎),外科的介入は避けるべきである.多くの患者では頻回の画像検査と臨床的な経過観察が合理的なアプローチである.クリニカルパール2図  前部トルコ鞍腫瘤図1の一部を拡大.

元のページ 

page 3

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です