2204看取りの医療 改訂第2版
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99 1982年にイギリスオックスフォードでは,世界で最初のこどもホスピスがスタートしました.シスター・フランシスによって創設されたこの施設は最初に預かった脳腫瘍の子の名をとって「ヘレンハウス」と名づけられました.シスター・フランシスは脳腫瘍のヘレンちゃんを抱えたお母様が日頃の介護で疲労困憊になっているのを見るに見かねて,「少しの間だけでもその子を私に預けてください」とその子を預かったのが始まりです1).成人のホスピスは1967年にシシリーソンダースによりがん患者の穏やかな看取りを目的にスタートしましたが,小児のホスピスは看取りが最初の目的ではなく,難知性の疾患をもつ子どもを一時的に預かることからスタートしました.現在のこどもホスピスとはこのように,がんの看取り「エンド・オブ・ライフケア」だけでなく難治の疾患をもつ子どもを一時的に預かる「レスパイトケア」も含み,厳しい困難のなかにある子どもと家族が,限られた生命をいかによく生きるかに主眼があるといえます.日本でもわれわれの施設だけでなく東京や大阪や九州にも第2,第3の「こどもホスピス」設立の動きが始まっています.このこどもホスピスの働きを紹介しながら,小児緩和ケアの概念と実際についても説明を行っていきたいと思います. 前述しましたが,こどもホスピスでは病気を治療することに主眼がおかれるのではなく,いかによく生きるかに焦点があてられます.このような考え方に基づいた医学的な分野が小児緩和ケアです.ホスピスケアと小児緩和ケアは,従来は同様な意味に使われている場合も多かったようです.しかしながら,現在は急性期病院の急性期の段階においても,緩和ケアの概念を取り入れられるようになり,ホスピスケアはホスピスにおける取り組みをおもに指し,小児緩和ケアはそれ以外の急性期から地域における取り組みまで広く含むという考え方が一般的です. 小児の緩和ケアの定義でよく用いられているのが,2003年に提示された以下の文章です. 「致死的な難病(life‒threatening illness:LTI)の小児および若者のための緩和ケアとは,身はじめに1 小児緩和ケアの定義淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院鍋谷まことⅣ緩和ケアと看取りの医療3小児緩和ケア

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