2204看取りの医療 改訂第2版
17/22

3 小児緩和ケア103Ⅳ緩和ケアと看取りの医療てもよいように伝えており,実際に家族同士3家族が自分たちからの発案で当院のこどもホスピスの病棟の学校のコーナーに集まって,横浜に帰る友だちへのお別れ会を開いたりしました.こういった自発的な活動や,同じ気持ちの遺族家族との交流は,死別後の悲哀を軽減させます.また子どもたちの記念となる思い出を書き込んだ木製の円盤を,チャペルの横の常設コーナーにおいて,来てもらったご遺族が子どもとの想い出にいつまでも会えるよう工夫しています.5)小児緩和ケアの定義に基づいた病棟づくり 先の小児緩和ケアの定義には以下の文章が附則されています. 「致死的な難病のこどもとその家族のQOL向上のための全人的ケア.診断時に始まり,療養生活,ターミナル期を経て,死後までこどもと家族が望む限り継続的に,望む場所でケアを提供する.」 私たちはこの文章に鑑みながら,小児のためのこどもホスピス病棟の理念を「こどもの望む場所で家族,仲間と楽しく過ごすことを支える病院」としました.すなわち後でも触れますが,必ずしも「こどもホスピスにおける看取り」にこだわらず,子どもが在宅を望んだ場合にはその可能性を最後まで家族と一緒に考え,本人および家族の希望に最大限に尊重するようにしています. 実際の付帯設備としては,2階のこどもホスピス病棟に子どもが遊べるプレイゾーン(通称「おそと」),家族でゆっくり過ごせる本格的な手づくり料理にも対応できるシステムキッチンと食卓とリビングを配置したゾーン(通称「おうち」),いろいろな勉強や作業が可能なゾーン(通称「がっこう」)を設置しました.また,家族と難病の方が過ごせる30~33平方メートル以上ある個室を六室用意し,悪性腫瘍をもつ子どもとその家族の「エンド・オブ・ライフケア」にも対応しています(この場合,その病院生活は数か月に及ぶことも予想され,あえて個室料なしに設定しました).部屋の中には,ユニットバスやトイレ,ミニキッチンなども設置しており,さながら自宅のリビングルームのように過ごしてもらうことをめざしました.もちろん家族が一緒に過ごすことが目標ですから,特別な伝染性の疾患をもっている場合以外は面会制限はありません.部屋の中にはテレビのほかにLANケーブルも設置し,自宅やお友だちとネットを通じてつながれるよう配慮しました. またヘレンハウスと同様に,在宅で長期療養中の難病の子どもで,気管切開や人工呼吸器,酸素投与,経管栄養などの医療的ケアのためにどこにも預けることができず,家族自体が大変なストレス下で生活しているような場合,そういった子どもも医療短期入院または重症心身障害児の短期入所サービスとしてお預かりできる10平方メートル以上ある個室を六室用意しました.これらの部屋の正面,あるいは枕もとには,本人またはご家族が気に入った手づくりの照明を自分で選んできて付けてもらうなど,照明環境にも工夫しています. このように日常生活の小さな希望にもできるだけ寄り添いたいと考え,設計しました. 小児の「エンド・オブ・ライフケア」においては,病院でもいままで過ごしてきた家族・

元のページ 

page 17

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です