2204看取りの医療 改訂第2版
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104Ⅳ 緩和ケアと看取りの医療親戚や地域の仲間との関係を維持することが重要です.そういった理念を実現すべく,遠方から久々に訪れる祖父母などの親戚が利用できる休憩ゾーンも3階に5部屋(1人用3部屋,2人用1部屋,6帖2間の和室1部屋)用意しており,夜間の宿泊利用にも対応できるようにしています.また,外泊や外出にも随時対応しており,地域の仲間が来て騒いだり記念会を開いたりさまざまな要望にも可能な限り応えながら,いままで過ごしてきた地域や病院における関係性を,当院に入院しながらも維持・実現できるよう努めています.以下にこどもホスピス病棟開設後2年の実績を示しました.<こどもホスピス開設から二年の診療実績>・小児がん患者の入院数13例(脳腫瘍9例,他の固形腫瘍3例,白血病1例) 人工呼吸器装着…3例,22% 看取り…院内7例(自宅3例,他院1例)・在宅の難病児対象のレスパイトケア入院数…登録人数203例 経管栄養…約8割 気管切開…約4割 人工呼吸器装着…約3割 小児の緩和ケア医療,特に「エンド・オブ・ライフケア」において重要な原則は,患者中心,家族中心,そして周囲との関係性を重視するケアを行う点です.一般化された方法を適応するというよりも,患者や家族の願いや選択を優先させなければなりません.そして,もう一点忘れてはならないのが連続性を大切にするということです.成人の場合も同様ですが,緩和医療とは実は病気の急性期の診断・治療の時点から開始されなければなりません.病初期から患者や家族がもつさまざまな不安や訴えに対し,支持的にかかわり,急性期の段階から亜急性期,そして慢性期や,「エンド・オブ・ライフケア」に至るまでをつないでいかなければなりません. 当院こどもホスピスにおいても,化学療法は従来の高次機能病院で実施しながらも,治療と治療の間の寛解期に当院を利用するパターンの小児がんの家族がおられました.寛解期には自宅に帰って家族で暮らすことを熱望しておられましたが,夜間は気管切開から人工呼吸管理を実施しなければならず,それが不可能でした.病気が発症してから1年以上も父母と患児との3人で寝たことがなく,当院の個室において家族3人で久しぶりに過ごせたことを心より喜んでおられました.そして,数か月のこどもホスピスでの家族3人水入らずの生活の後,亡くなられました.先の「コミュニケーション・スキル」の項で述べましたが,病状の進行に伴い,意識低下が顕著になるなか,長い苦悩の時間もありました.しかしながら,亡くなられてから数か月後のスタッフの家庭訪問の際に,「当院はまさに“第二のわが家”で,家族で大切な時間を過ごせました」と述べられました.3 エンド・オブ・ライフケアにおける小児緩和ケアの実践

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