2204看取りの医療 改訂第2版
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6Ⅰ 総 論 2013年広島での第116回日本小児科学会学術集会(小林正夫会長)において,著者は「新生児医療の進歩と生命倫理―医的侵襲行為の差控え・中止の基本的考え方」という教育講演を行い,最後に下記のような5つの提言を述べました2). (1) 死をタブー化しないで,看取りのベスト・プラクティスのために,多面的に学問の光を照て研究する. (2)医学教育の中に臨床倫理学,緩和ケア(全人医療)の基礎教育を導入する. (3)医的侵襲行為は,原則傷害行為であることを認識する. (4) patient & family centered careの医療現場への導入と普及を行う(尊厳・尊重,情報共有,参加,協働). (5)倫理的意思決定において,子どもの最善の利益を中心に協働意思決定を推進する. その講演の中で「通常の医療行為の範疇」における倫理的・医学的意志決定のプロセスの基本的な考え方と具体的なプロセスと対応についても述べました.1)倫理的・医学的意志決定のプロセス それでは,「通常の医療行為の範疇」における倫理的・医学的意志決定のプロセスとはいかなるものでしょうか? 現在筆者が考える基本的な考え方および具体的なプロセスと対応を図1に示します2)15)16).特に重篤な新生児や小児のように自分で意思表示が困難な場合,まず複数医師による生命・障害予後の客観的な科学的判断,本人の最善の利益(best interests)を中心に家族と医療チームで本来傷害行為にあたる侵襲的治療介入の是非<制限・差し控え・中止>の検討と十分な話し合い,情報共有の上法的代理人である家族の希望表出と決定への参加です.さらに家族の希望が医療チームの倫理的許容範囲であれば協働意思決定を行8 今後の適正な医療発展のための提言9 「通常の医療行為の範疇」における倫理的・医学的意志決定のプロセスとは?表3●臨床倫理学の講義に対する医学生の感想・ 「先生は実体験や冗談をまじえて生命倫理という重い話題を伝えてくださった.いろいろな実例を聞くと,先生が『すべての医療従事者は臨床倫理学を学ぶべきである』という理由がわかった気がした.」・ 「非常にわかりやすい,先生の人柄がにじみ出たユーモア溢れた講義だった.死はもちろん悲しくてつらい出来事には違いないが,故人,遺族ともにできる限り後悔しない別れ方を提供するのも医療従事者の仕事だと思った.」・ 「今回の授業を通し,生まれてすぐに亡くなる子どもたちというある種のタブーとされる部分を聞くことができ,とてもよかった.」・ 「私は小児科に将来進みたいと考えているので,今回の講義を聞くことはとても大切なことであり,とても意味のあることであったと思った」・ 「いままであまり意識したことはありませんでしたが,今回の先生の講義を受け,小児科に興味を持ち,なってみたいと感じた.」〔文献2)より〕

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