2212診療実践小児神経科
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1) 遅れの時期と経過の評価 発達の遅れを主訴に受診された場合,現在までの発達のマイルストーンを評価し,①遅れのはじまった時期,②遅れの経過(遅れながらも発達しているか,ほとんど発達していないか,できていたことができなくなっていないか,階段状,周期的に悪化していないか)を評価する.この2つの評価で疾患の性質を推察する. 生後まもなくから遅れながらも発達していくものは,脳の形成障害,周産期脳障害などである.先天性で非進行性の脳の障害でも,軽度の場合は言葉の発達がみられる1歳や,集団での学習がはじまるような時期に遅れが明らかになる.あるときまで正常に発達し,その後退行(deterioration)するものは先天代謝異常症,神経変性疾患,てんかん性脳症などである.遅れが気づかれる時期と遅れの経過を見極めることが診断の第1ステップとなる. 発病の経過に加えて,家族構成を含む家族歴,妊娠中の異常・周産期歴,発達歴,予防接種歴を評価する.2) 発達の遅れの内容の把握 診察の前に,問診で発達レベルを客観的に評価することが大切である.外来では,遠城寺式乳幼児分析的発達検査法(発行元:慶應義塾大学出版会)が簡便である(54ページ図1参照).在胎週数を修正して,運動(移動運動,手の運動),社会性(基本的習慣,対人関係),言語(発語,言語理解)の領域について遅れがあるかどうかを評価する. すべての領域が平均的に遅れる5歳未満児はDSM-51)で全般的発達遅延(global developmental delay)というカテゴリーに分類される.全般的発達遅延の臨床的重症度が評価できる場合には,知的発達症/知的発達障害(intellectual developmental disorder)として,その重症度を示す.言語発達のみが遅れる場合は言語症/言語障害(language disorder)で,受容性と表出性の両方の評価が必要である.DSM-51)では運動症群/運動障害群(motor disorders)には発達性協調運動症/発達性協調運動障害(developmental coordination disorder),常同運動症/常同運動障害(stereotypic movement disorder)とチック症群(tic disorders),その他に分類されているが,運動は移動運動と微細な手先の運動の発達に分けて評価することが必要である.移動運動も微細運動も遅れる運動発達の遅れ・退行はPart1 B運動発達の遅れ・遅行に記載されている.寝返りや歩行など発達の遅れの評価1A全般的発達の遅れ(知的発達の遅れ)と 退行の評価2

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