2213結節性硬化症の診断と治療最前線
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138 日本における結節性硬化症(TSC)を取り巻く環境は,この数年で大きく変わった. 2012年秋にロサンゼルスで開催された“Tuber-ous Sclerosis Alliance”(アメリカTSC患者会)の会議に初めて参加した.UCLAのTSCクリニックの先生方が中心となり,最新の研究発表を患者や家族が熱心に聞いていた.聴衆は発表者へ自由に質問をして,患者,医師,研究者のどちらが上でも下でもなく,同等で一体となった会議であった.当時,日本でこのような会が開催される日がくることや,TSCの専門クリニックができるのは遠い未来のことであろうと思っていた.日本結節性硬化症学会の設立,病気をもつ者にとって生きやすい社会1 日本結節性硬化症学会が樋野興夫先生によって設立されたのは,時を同じく2012年だった.日本でTSCの研究・臨床の中心となっている先生方が一同に集結した.難病には「アイス・バケツ・チャレンジ(ice bucket challenge)」で話題となった筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)のように,一般に知られている難病もあるが,知名度の低いTSCという病気の学会ができたこと自体が大きな驚きであった.それだけでなく,医師や研究者からなるいわゆる学会と異なり,患者,家族その他,希望する者は誰でも会員になることができるユニークな市民学会として動き出したのである. 2013年秋に第1回日本結節性硬化症学会学術総会が開催された.医師,研究者,患者,家族を一同に会した記念すべき会であった.樋野先生は,病気が一個性とみなされる社会の実現を掲げている.樋野先生がいうような,患者が病気を隠さなくてもよい,社会が病気を一個性として受け入れる時代を日本で迎える日が近いと願いたい. これまでTSCの患者や家族は,「TSつばさの会」を通じてつながりを培い,治療についての情報を得て,お互いをサポートしてきた.その中心となってきたのが代表の平岡氏であり,患者家族にとってはゴッドマザーのような存在である.最近はSNSの普及により,新世代の母親たちはブログ等を通じて独自のネットワークを広げている.これも悪くはないが,フェイス・トゥ・フェイスでの人のつながりがやはり一番大切なのではないか.「TSつばさの会」は,これからも患者やその家族の駆け込み寺として役割を担っていくことは変わらないであろう. これに対して日本結節性硬化症学会は,本質的に違う役割を担っている.敷居が高いと感じる患者や家族もいるかもしれない.しかし,学術総会では日本でTSCの最前線の治療・研究をしている先生方が参加し発表をする.そこに患者や家族も自由に参加をして,医師や研究者と意見交換ができるということは,従来の日本における医師と患者の関係からすると画期的なことである. 日本結節性硬化症学会はこれからも最新の情報を発信し,患者と家族,医師,研究者の垣根を超えた人と人とのつながりを広げ,TSCがもっと世間の人に認知されるよう活動をしていってほしい.第4章結節性硬化症の診療体制とサポート結節性硬化症患者のQOLについて考える武井 愛 (日本結節性硬化症学会ファミリーネット委員会)D

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