2216EBウイルス関連胃癌
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40る.これらの宿主免疫反応がなぜEBV潜伏感染腫瘍細胞をすべて破壊し得ないのかは,十分には解明されていないが,最近の免疫チェックポイント研究の進展とのかかわりが興味深い.臨床的意義として,この腫瘍浸潤リンパ球(宿主の炎症性反応)の存在は,EBV関連胃癌の転移の抑制や予後の改善に役立っているものと考えられている.このような組織型の特徴は,当然ながら,肉眼像に反映される. EBV関連疾患のうち,上咽頭癌(nasopharyn-geal carcinoma;NPC)では,EBVのviral capsid antigen(VCA)に対するVCA—IgAが高値となり病勢に応じて上下するとされ,その診断的価値が知られている. EBV関連胃癌に関して,日本人男性の胃癌54例と対照54例の胃癌診断の5~10年以上前の保存血清を用いたLevineらの報告では,EBV関連胃癌を発症した群(14名)のVCA—IgGは対象群(54名)よりも有意に高値であり,これに対してEBV陰性胃癌を発症した群(40名)ではVCA—IgGは対象群とほぼ同様であった7).Imaiらの胃癌1,000例中70例(7%)のEBV関連胃癌の検討においても,14例のEBV関連胃癌患者と年齢をマッチさせたEBV陰性胃癌患者14例および健常人24例の比較で,EBV関連胃癌患者ではVCA—IgGおよびEBV early antigen(EA)—IgGが有意に高値であった.EBNA抗体には差がなかった4).また,Shinkuraらは,EBV関連胃癌64例,EBV陰性の胃癌59例,対照の健常人73例における検討を行い,VCA—IgGとEBNA—IgGは196例全例で陽性であり,EBV関連胃癌群のみで高値であったのはVCA—IgAだけであったと報告している8).さらに,Schetterらは,中国の183例において,採血時と2年後に内視鏡的に経過を観察された胃の前がん性変化としての慢性萎縮性胃炎(61例),腸上皮化生(67例),dysplasia(53例)においてEBNA—IgGとVCA—IgGを検討している.採血時には胃の組織像による抗体価の差はなかったが,EBNA—IgGとVCA—IgGが高値であることは,腸上皮化生の進展と関連していたと報告している9).EBV関連胃癌とEBV抗体系図1 ‌‌症例1:50歳代男性,胃の上部(胃体上部小弯)のEBV関連3型進行胃癌症例CLSの組織型で,ほぼすべての腫瘍細胞がEBER1陽性であり,EBV関連胃癌典型症例.Hp陽性.〔文献10より改変引用〕カラー口絵2参照CLSH. pyloriCLSEBV(EBER1)

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