2216EBウイルス関連胃癌
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438 EBウイルス関連胃癌の臨床像と上部消化管疾患パ球浸潤を伴うCLS病変を,胃壁第3層(SM)内のSMT様の低エコー腫瘤として観察することができる10,15)(図4,5).胃のCLS多数例(274例)についての韓国のLimらの最近の検討においても,CLS病変の肉眼型は一般的な未分化型腺癌とは異なり,表面型41.2%,1型2.2%,2型20.1%,3型35.8%,4型0.7%と報告されている16). EBV関連胃癌の多くはリンパ球浸潤に富む未分化型主体の病変であると考えられている.しかしその一方で,Koriyamaらのわが国の胃癌1,918例の検討では,EBV関連胃癌の占める割合は組織像intestinal typeの病変で4.5%,diffuse typeの病変で6.1%とも報告されており,EBV関連胃癌がすなわち未分化型であるということはできない17).この一見混乱したEBV関連胃癌の組織型についての知見は,EBV関連胃癌における腫瘍内での分化度の変化(低下)により理解される.EBV関連胃癌の特徴的とされる組織像の一つとして,さらに,lace patternが知られている.lace pat-ternは,織物のレース織り様と表現されるように,網目状・融合状の腺管よりなる組織像であり,intestinal typeとdiffuse typeのいずれのEBV関連胃癌においてもみられるとされる18).このような組織像は,EBV関連の中分化型管状腺癌が徐々に腺管構造を失い分化度を低下させていく過程を示すとも考えられる.CLS病変においても,粘膜部の分化型病変部が粘膜下層深部の未分化型主体CLS部へ連続し,同一病変内で分化度の低下が生じている場合が経験される19—21)(図2,4,5).このような深部浸潤に伴う表層の分化型から深部の未分化型への分化度の低下と,浸潤部で目立つ著明なリンパ球浸潤による腫瘤形成が,EBV関連胃癌の内視鏡像を特徴付けている.また,粘膜病変部での分化型のlace patternや胃炎性変化と類似したLELCの存在は,内視鏡観察によるEBV関連胃癌病変の存在の認識や病変の境界診断を困難とする要素であると思われる(図2,図4).EBV関連胃癌病変での分化度の低下と内視鏡像図3 症例3:60歳代男性,EBV関連0Ⅱc型(UL‌scar+)早期胃癌症例胃粘膜萎縮境界近傍の萎縮側に発生しており,PAS陽性のEBER1陽性胃癌細胞の周囲には腺管萎縮やアルシアンブルー(AB)陽性粘液を有する腸上皮化生がみられる.〔文献26より改変引用〕カラー口絵4参照0Ⅱc(UL scar+)萎縮境界(O1)近傍胃粘膜萎縮境界EBER1腺癌と周囲の萎縮性変化PAS-AB

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