2218麻酔科クリニカルクエスチョン101
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表1 貯血式自己血輸血の適応・禁忌・注意点■適 応・輸血が必要な全身状態が安定している予定手術患者.・まれな血液型や不規則抗体をもった患者.・患者本人の理解と協力,同意を得られる場合.・年齢・体重制限はない.・Hb値11.0 g/dL以上を原則とする.※ 収縮期血圧180 mmHg以上,拡張期血圧100 mmH以上の高血圧,あるいは収縮期血圧80 mmHg以下の低血圧の場合は慎重に■禁 忌①全身的な細菌感染症および感染を疑わせる患者.・治療を必要とする皮膚疾患・露出した感染創・熱傷のある患者・熱発している患者・下痢のある患者・抜歯後72時間以内の患者・抗菌薬服薬中の患者・3週間以内の麻疹・風疹・流行性耳下腺炎の発病患者・IVHを施行中の患者②重症心不全③不安定狭心症④中等度以上の大動脈弁狭窄症■注意点①輸血時・血液製剤・患者の取り違え・ 自己血製剤の細菌汚染,敗血症(特にMAP液保存の場合はエルシニア菌によるエンドトキシンショック)・過剰輸血②貯血時・正中神経障害・血管迷走神経反射・血腫希釈式・回収式自己血輸血の適応と注意点について希釈式:全身麻酔後に自己血を約400~1,200 mL程度採取し,同時に代用血漿を補填する.希釈血液により喪失する血球成分を減少できる点や凝固成分を含んだ全血を使用できる利点があり,多くの外科手術や緊急時にも行える.しかし,循環動態の急な変化が生じるため,低心機能や虚血性疾患の患者,循環動態の安定しない症例には適さない.代用血漿の量が増えると凝固障害をきたす可能性もあるので,絶えずそのリスクに注意が必要である.回収式:開心術・大血管手術,整形外科領域などの無菌的な手術の場合は極めて有効.前置胎盤・癒着胎盤などの大量出血が予測される婦人科手術もよい適応である.保険適応は出血量が600 mL以上の手術の場合とされている.感染巣・消化管手術・悪性腫瘍手術では細菌や悪性腫瘍細胞の混入の問題から禁忌となる.手術室で採取し,病棟などで輸血する場合は,取り違えなど起こさないよう十分注意が必要である.洗浄式・非洗浄式のどちらも回収血中には遊離ヘモグロビンを含むため,ヘモグロビン尿が認められることがある.この場合はハプトグロビンの投与を考慮する. (林 智子,西脇公俊)Mini LectureChapter 1 術前回診と術前評価14

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