2220よくわかる 子どもの喘鳴診療ガイド
10/14

第3章 主な喘鳴性疾患の病態と治療1561)発作の予防 喘息の日常管理の目標は発作のない状態を維持することであり,環境整備と重症度に見合った予防的薬物療法を行う.予防のための長期管理薬としては,抗炎症治療薬である吸入ステロイド薬,ロイコトリエン受容体括抗薬などが主体となる.治療前の臨床症状に基づく重症度分類(表2)1)に従って,間欠型,軽症持続型,中等症持続型,重症持続型以上の順に,年齢(2歳未満,2~5歳,6歳以上)に応じたステップ1,2,3 および4の治療を開始する.「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012」(JPGL2012)における2~5歳の治療プランを表31)に示す.薬物療法開始後は,発作コントロール状態を評価しながら治療のステップアップ・ステップダウンを行っていく.表41)にJPGL2012におけるコントロール状態の評価法を示す.2)急性発作時の対応 JPGL2012における発作時の薬物療法プラン(2~15歳)を表51)に示す.即効性のある短時間作用性β2刺激薬吸入が第一選択であり,中発作以上ではステロイドの全身投与が治療の主体となる.2歳未満においてもほぼ同様の内容となっているが,入院基準が年長児に比べて厳しくなっている1). 全身性ステロイドの使用についてJPGL 2012では,“患者の発作状態の適切な評価に基づいて行い,漫然とは行わない.改善が得られれば早期に中止する”としている.また大発作・呼吸不全であっても,“通常は3~5日間の使用で十分な効果が期待できる.この場合の十分な効果とは聴診上の呼吸複雑音の完全な消失までを意味するものでなく,努力呼吸がなくなるなど臨床的な改善が明らかとなることを指している”としている.発作回復期において特に気道表4 喘息のコントロール状態の評価評価項目コントロール状態良好(すべての項目が該当)比較的良好不良(いずれかの項目が該当)軽微な症状なし(≧1回 / 月)<1回/週≧1回/週明らかな喘息発作なしなし≧1回/月日常生活の制限なしなし(あっても軽微)≧1回/月β2刺激薬の使用なし(≧1回 / 月)<1回/週≧1回/週※1コントロール状態を最近1か月程度の期間で判定する.※2軽微な症状とは,運動や大笑い,啼泣の後や起床時に一過性にみられるがすぐに消失する咳や喘鳴,短時間で覚醒することのない夜間の咳き込みなど,見落とされがちな軽い症状を指す.※3明らかな喘鳴発作とは,咳き込みや喘鳴が昼夜にわたって持続あるいは反復し,呼吸困難を伴う定型的な喘息症状を指す.※4可能な限りピークフロー(PEF)やフローボリューム曲線を測定し,「良好」の判定には,PEFの日内変動が20%以内,あるいは自己最良値の80%以上,1秒量(FEV1)が予測値の80%以上,β2刺激薬反応性が12%未満であることが望ましい.※5評価に際し,最近1年間の急性増悪による入院や全身性ステロイド薬投与などの重篤な発作,あるいは症状の季節性変動など,各患者固有の悪化因子(リスク)を考慮して治療方針決定の参考にする.〔濱崎雄平,河野陽一,海老澤元宏,ほか(監修),日本小児アレルギー学会(作成):小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012,協和企画,2011〕

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る