2220よくわかる 子どもの喘鳴診療ガイド
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第4章 Expert Eyes166 気管支喘息発作で入院し,本日入院4日目.1週間前に上気道炎に罹患後,喘息発作が出現.当科受診時,呼吸数50回.呼気の延長著明で,両側胸部でwheezesを聴取.SpO2は90%,mPIスコア(p.15)は11点であった.β2刺激薬吸入を実施したが呼吸困難が改善しないため入院とし,イソプロテレノール持続吸入と静脈を確保してステロイド薬の全身投与1日3回を開始した.その後,呼吸困難は徐々に改善し,イソプロテレノールは2日間で中止し,現在ステロイドを1日2回投与中.一昨日より普通に食事も摂れ,活気良好である.湿性咳嗽を時に認めるが,睡眠障害はなくなっている.mPIスコアは4点.聴診上,右胸部のみであるがrhonchiが残るため,ステロイドの全身投与は喘鳴が消失するまで続ける予定.3歳,男児喘鳴が続く場合にステロイド全身投与を続けるべき?01 重篤な喘息発作に対し入院させてイソプロテレノール持続吸入とステロイド薬の全身投与を開始したケースで,適切な治療が行われているように思われます.ただし,ステロイドの中止時期の判断が問題かと思います.入院当初のwheezesは,気道平滑筋の収縮( p.21),粘液分泌の亢進(p.25),気道粘膜浮腫(p.30)など激しい炎症反応が引き起こされた結果かと思います.一方,現在の状態として呼吸困難は消失しmPIスコアは低値で,気道平滑筋の収縮などの炎症反応はすでに収まっているものと思われます.現在聴取されるrhonchiは粘液分泌の亢進,気道浮腫の結果生じた気道粘液が,末梢気道から中枢気道へと排出される治癒過程と考えます.このような状態にステロイドの全身投与の効果はないと思われます.喘鳴が続くために点滴し注射薬を持続するよりは,点滴を抜いてベッド上安静を解除するほうが喀痰排泄にとっては有効な方法と思います( p.25気道分泌の項参照). (徳山研一)

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