2220よくわかる 子どもの喘鳴診療ガイド
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A 喘鳴理解の基礎知識−3. 喘鳴の病態の多様性9 本書では喘鳴の発生機序・病態を考えながら最適な治療法が選択できるように,実践的な情報を提供したいと考える.喘鳴の原因分類と概略 本書では喘鳴を発生機序・病態から表1のように分類した.以下,それぞれの喘鳴の病態を略述する.1)外因刺激に対する反応 外部からの刺激,例えば病原微生物やアレルゲンの侵入に対して,本来は生体防御のための反応として,気道平滑筋の収縮,粘液過分泌,血管透過性亢進に基づく気道粘膜浮腫などが引き起こされる.これらの気道反応の標的臓器は順に平滑筋,気道上皮杯細胞や粘膜下腺,および細静脈血管内皮細胞であり,それぞれ異なる.これらの反応は気管支喘息のように,複合的に出現し喘鳴を生じる場合がある一方,それぞれが個別に生じる場合もある. ①気道平滑筋の収縮(p.21)は,気管支喘息発作,あるいはアナフィラキシーの部分症状として起こる.症状は速やかに出現するため,高度な閉塞では窒息の危険があり,迅速な対応が必要である. ②粘液過分泌(p.25)は,上気道から下気道まで広く存在する粘膜下腺から分泌される粘液や漿液,および気道上皮杯細胞から分泌される粘液が過剰に産生される病態である.多量の粘液の気道内貯留は高度の呼吸困難をきたし,窒息死の原因となりうる.急性鼻炎などの上気道疾患から細気管支炎,肺炎などの下気道疾患まで,多くの呼吸器感染症で喘鳴の原因となる.感染症以外では,喘息,アレルギー性鼻炎,(受動)喫煙などでも認められる. ③気道粘膜浮腫(p.30)は気道の血管系,特に細小静脈(postcapillary venules)の血管透過性亢進によりアルブミンをはじめとした血漿成分が間質に滲出(exdation)する結果,気道粘膜の腫脹(浮腫)をきたす炎症反応である.気道部位により症状が異なり,鼻粘膜では鼻閉の原因となり,喉頭浮腫は時に生命を脅かすほどの吸気性喘鳴と呼吸困難を引き起こす.下気2.表1 喘鳴の病態からみた分類〔外因刺激に対する反応〕 ①平滑筋収縮 ②気道分泌 ③気道粘膜浮腫〔気道の機能的・器質的閉塞〕 ④気道の先天異常 ⑤気道内の腫瘤(内部からの圧迫) ⑥外部からの圧迫 ⑦気道異物 ⑧誤 嚥  ⑨胃食道逆流症 / 咽喉頭逆流症 ⑩うっ血性心不全 ⑪心因性喘鳴

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