2220よくわかる 子どもの喘鳴診療ガイド
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第1章 喘鳴を科学する-病態の正しい理解のために-10道では呼気性喘鳴の一因となる.炎症性メディエーターのうち,血小板活性化因子(platelet-activating factor:PAF)など一部の物質は,平滑筋収縮よりも気道粘膜浮腫優位の気道閉塞を惹起する3).2)気道の機能的・器質的閉塞 気道の機能的・器質的閉塞は気道内部あるいは外部の異常により,気道が一部あるいは広範に狭窄し,喘鳴を生じるものである. ④気道の先天異常としては,鼻腔狭窄や巨舌,小顎症,舌根囊胞などの頭部・顔面の異常,喉頭軟化症,声帯麻痺,声門下狭窄などの喉頭の病変,気管・気管支軟化症,気管狭窄,気管支狭窄などの気管・気管支疾患がある.喘鳴は上気道では吸気性であり,狭窄部位が下気道に向かうほど呼気性が中心となる.声門周辺では,嗄声などの合併症状の有無が病変の部位診断の助けとなる. ⑤気道内の腫瘤・腫瘍(p.37)としては,喉頭部・気管腫瘍,気管肉芽腫などがある.腫瘍の場合,増大とともに喘鳴は顕著となる. ⑥外部からの圧迫(p.42)としては,先天的なものとして血管輪などが,腫瘍性の病変として縦隔腫瘍などがある.いずれも気道外部から気道を圧迫し,喘鳴を生じる.胸部単純X線にて,気道の位置異常で気づかれる場合もある.3)気道異物(p.45) ⑦気道異物は,鼻腔あるいは口腔から気道に異物が吸引された状態である.吸引される部位によって喘鳴の特徴は異なり,喉頭や気管など太い気道に嵌頓して気道閉塞が生じた場合は,著明なstridorを伴い,窒息死の危険がある.気管支の閉塞では,呼吸音の左右差と呼気性喘鳴を伴う強い呼吸困難を認めることが多い.気道内を行き来するサイズの異物では,見逃されると慢性の喘鳴や咳嗽の原因となる.4)誤 嚥(p.50) ⑧誤嚥は,鼻咽頭分泌物の下気道への少量の誤嚥から,有害化学物質の大量誤嚥まで幅広い概念である.大量誤嚥の多くは嘔吐によることが多く,先天奇形や発達障害に伴う嚥下障害と関連することが多い.誤嚥性肺炎では呼気性喘鳴を生じる.5)胃食道逆流症 / 咽喉頭逆流症(p.54) ⑨胃食道逆流症 / 咽喉頭逆流症は,胃内容物が食道や咽頭や喉頭へ逆流する病態である.症状は大きく消化器症状と消化器外症状に分けられる.乳幼児に多いとされるが,乳児は哺乳中や哺乳後に,幼児は運動時などに症状を呈する.また,乳児では消化器症状を伴うことが多く,幼児では消化器症状を欠くことが多いとされる.喘鳴は主に呼気性である.6)うっ血性心不全(p.59) ⑩うっ血性心不全は,左心不全による肺うっ血の症状である.心雑音や多呼吸,体重増加不良,レントゲンにおける心陰影拡大などで疑われる.以前“心臓喘息”などとよばれていたようにwheezesを認めることが多く,喘息との鑑別が必要な疾患である.念頭にないと見逃されることもあり,注意が必要である.7)心因性喘鳴(p.62) ⑪心因性喘鳴とは心因が関与して生じる喘鳴をさす.これらは元々ある喘鳴性疾患の発症や

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