2220よくわかる 子どもの喘鳴診療ガイド
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153喘鳴・呼吸困難の特徴 様々な刺激により,気道平滑筋収縮(p.21),気道分泌亢進(p.25),気道粘膜浮腫(p.30)が複合的に生じる結果,喘鳴が出現する. 喘鳴は無気肺や肺炎などの合併症がなければ,左右対称性のwheezesである.喘鳴の程度は発作強度により異なる(p.14 表3)1).小発作では軽度のwheezesであるが,中~大発作にかけて呼気延長とともにwheezesは著明となる.さらに狭窄が高度になると,気流制限により呼吸音が減弱し喘鳴が聴取されないことがある.このためチアノーゼの有無やSpO2など他の所見とあわせ,重症度を評価する必要がある.このような場合,発作の改善とともにwheezesが遅れて明らかとなってくることが多い. 発作強度により,喘鳴の改善に要する時間は異なる.小発作の場合,治療によりwheezesは速やかに消失することが多いのに対し,発作が高度になるほど喘鳴は遷延化する.特に全身ステロイドを要する発作では,初期は高度の狭窄のためwheezes中心であるが,改善とともに気道分泌液の排出が増加し,rhonchiが数日続くことがある. 合併頻度の高いアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎による後鼻漏が喘鳴の原因となることがある.喘鳴に対する抗喘息薬の効果が不十分のときは,これら鼻疾患による可能性も考慮する.喘鳴はrhonchiのことが多いが,時にwheezesのこともあるため,喘鳴の発生部位を注意して特定する.1.5.気管支喘息疾患の概要発作性に起こる気道狭窄によって,主に呼気性喘鳴,呼気延長,呼吸困難を繰り返す疾患である.呼吸困難は自然ないし治療により軽快・消失するが,ごくまれに致死的となる.疾患の本態はアレルギー性の慢性気道炎症と気道過敏性であり,気道の不可逆的構造変化(リモデリング)の関与も考えられている.発症には特定の遺伝因子と環境因子の両者が相互に作用し合って関与すると考えられる.アトピー型喘息が多く,屋内塵ダニに対するIgE抗体陽性者が多い.他のアレルギー疾患を合併することが多く,特にアレルギー性鼻炎の合併は高率である.ダニ,ペットなどのアレルゲン以外にも,運動,ウイルス感染,煙などの気道刺激物質曝露などにより増悪する.約8割は3歳までに発症し,9割がたは就学までに発症する.

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