2228小児急性脳症診療ガイドライン2016
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48■1 意識状態・神経学的所見意識状態(JCS,GCS)と瞳孔径,対光反射,角膜反射,眼球頭位反射などの脳幹反射を経時的に観察する.GCS<8あるいは短時間に2ポイント以上の低下,対光反射消失・瞳孔不同など切迫脳ヘルニア徴候が認められる場合には,速やかに頭部CTを行うことが推奨される.気道確保のために喉頭展開を行う場合には十分な鎮痛と鎮静を行うことに配慮するa).■2 頭蓋内圧亢進の管理①頭蓋内圧亢進を疑う場合は積極的に頭蓋内圧測定を施行することを考慮する.その場合,頭蓋内圧は20 mmHg以下になるように維持し,30 mmHg以上になる状態が3分以上継続しないようにコントロールされることが目標となる3-7).脳灌流圧(脳灌流圧〈CPP〉=平均動脈圧〈MAP〉-頭蓋内圧〈ICP〉)をモニターされた場合,乳幼児では40 mmHg以下,それよりも年長児では50 mmHg以下にならないようにすることが目標になる6, 8).②血圧が良好であれば頭部側を30°上昇させるようにベッドの傾きを調整してよいa).③脳圧亢進状態であると判断した場合は,3%食塩水を6.5~10 mL/kgを急速静注することが推奨される9).頭蓋内圧が測定できる場合,3%食塩水を0.1~1.0 mL/kg/hr速度で投与量を漸増していき頭蓋内圧が20 mmHg以下になるように最少投与量で維持する方法がある.血清浸透圧は320 mOsm/Lを超過しないようにするのが一般的であるが,脳圧亢進状態に対する治療として3%食塩水を使用した場合360 mOsm/Lまでは耐容しうるとの報告がある10).血清Naが160mEq/Lを超えると血清クレアチニン値が2倍以上に上昇するとの報告11)もあり,腎機能に注意する.④D-マンニトール(0.5~1 g/kg)を使用する場合は15~30分で静注,通常は1日に3~6回繰り返すb).血清浸透圧を測定し,320 mOsm/Lを超えないようすることを目標とする12).⑤グリセオール®は新生児や飢餓状態に陥っている乳幼児,先天性グリセリン代謝異常症,先天性果糖代謝異常症,フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(FBPase)欠損症などにおいては低血糖,高乳酸血症,アシドーシスなどをきたす場合があり推奨しないc).⑥バルビツレートは小児頭部外傷後の頭蓋内圧亢進に対する治療として他の方法による治療が不十分であり,血圧が安定している場合に試みてよいとされ13, 14),小児急性脳症においても同様の期待がもたれる.けいれん重積状態で使用する場合と同様の用量を使用してよい.⑦治療抵抗性を示す脳圧亢進に対する治療として過換気治療を行う場合はPCO2=25~30 mmHgまでにとどめ,頭蓋内圧測定をすることを考慮する15, 16).■3 脳波モニタリング小児の救急患者における様々な脳症では脳波モニタリングを行うことによりその重症度が判明するが,早期にその異常を発見し治療することが二次的な脳障害を防ぎ神経学的予後を改善するどうかについての結論はでていない.しかし,脳波モニタリングは多くの患者において臨床的管理の変更を決定するための情報をもたらす17).また,急性脳症小児においてみかけ上のけいれんが認められなくても,脳波上重積状態が認められる場合は致死率に影響し短期的神経学予後悪化因子となる18).したがって,小児急性脳症においては継

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