2228小児急性脳症診療ガイドライン2016
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第6章 けいれん重積を伴う急性脳症93増悪を認める.b)画像所見④3~14病日に拡散強調画像で皮質下白質(bright tree appearance)ないし皮質に高信号を認める.中心溝周囲はしばしばスペアされる(central sparing).⑤2週以降,前頭部,前頭・頭頂部にCT,MRIで残存病変ないし萎縮を,またはSPECTで血流低下を認める.中心溝周囲はしばしばスペアされる.①②に加えて③④⑤のいずれかを満たした場合AESDと診断する.c)参考所見❶原因病原体としてHHV-6,インフルエンザウイルスの頻度が高い.❷early seizure後,意識障害はいったん改善傾向となる.❸1,2病日に施行されたCT,MRIは正常である.❹軽度精神発達遅滞から重度の精神運動障害まで予後は様々である.■2 AESD診断についての解説重症・難治性急性脳症の病因解明と診療確立に向けた研究班(研究代表者:水口 雅)で使用したAESD診断基準1, 2)は,特徴的な臨床像,画像所見を列挙したものであった.そのなかから,臨床像としてearly seizureとlate seizure,画像所見としてbright tree appear-anceを主たる特徴と考え診断基準を作成した.②の発熱後のけいれん発作は必須項目とした.late seizureがsubclinical seizureである場合は,遅発性(4~6病日)の意識レベル低下として認識される可能性があるため,③はlate seizureないし意識レベルの低下のいずれかとした.重症で脳低温・平温療法,高用量バルビツレート療法施行中の患児では③が観察されないこと,画像診断を施行しえない(④が得られない)ことがありうる.そのため,③④⑤のいずれかがあればAESDと診断しうることとした.また,AESDは小児の感染に伴う脳症であり,bright tree appearance類似の画像所見を呈しうる頭部外傷,虐待,低酸素性脳症,臨床的に他の脳症症候群,脳炎は除外する必要があることを①に記載し必須項目とした.AESDの臨床像3-9)(図1)は,感染に伴う発熱初期に多くはけいれん重積で発症し,病原体としてHHV-6(38%),インフルエンザウイルス(10%)の頻度が高い.early seizureが数分と短い症例も報告されている6).early seizureが短い症例は,early seizureとlate seizureの間,ないしlate seizure後の意識障害が清明ないし極軽度で後遺症を残さないこともある.early seizure後は,意識障害はいったん改善傾向となり,20~30%の症例で意識はほぼ清明となる3).late seizureは4~6病日に多くは部分発作の群発として発症し,意識障害も増悪しうる.late seizureは非けいれん性のsubclinical seizureのことがあり10),持続的な脳波モニターが勧められる.late seizure後は,意識障害は徐々に回復する.この時期に不随意運動や常同運動がみられることも多い.慢性期には運動機能に比して知的障害が強く残存しやすい.AESD発症から数か月経過して,てんかん発作を起こすことがあり,しばしば難治性である11, 12).AESDは経時的に特徴的な画像所見(図1~3)を呈する3, 4).1,2病日に施行されたMRI

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