小児慢性特定疾病
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250各論❹|慢性心疾患疫 学 10万人に37人の発症率である。臨床症状 易疲労、呼吸困難、体重増加不良など。診断の際の留意点 III音の奔馬調律、僧帽弁閉鎖不全による収縮期駆出性雑音を聴取することがある。浮腫、肝腫大など心不全所見を認める。治 療1)‌日常生活の管理 無症状ならDの管理区分。有症状ならCの管理区分。原則として強い運動は禁止、学校の運動部は禁止。2)‌薬物治療 有症状例には慢性心不全に対する治療を行う。利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(angioten-sin converting enzyme-inhibitor;ACEI)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker;ARB)を投与する。β遮断薬(カルベジロールなど)の投与も考慮する。 急性心不全には、利尿薬、ホスホジエステラーゼIII阻害薬、カテコラミンの点滴を行う。不整脈に対しては、抗不整脈薬を投与する。 心室性頻拍症に対しては、アミオダロン内服や植込み型除細動器(ICD)が適応となる。3)‌デバイス治療 心停止蘇生例に対しては、ICD植込みが適応となる。右室と左室が同期して収縮していない例や、心電図上QRS幅が広い例では、心室再同期療法のペースメーカ植込みが適応となる場合がある。4)‌心臓移植 内科的治療に反応しない場合には、心臓移植の適応となる。その前に状態悪化が予想されるときは、人工心臓の植込みが適応となる場合がある。予 後 予後は不良である。1年生存率は63~90%、5年生存率は20~80%である。成人期以降の注意点 無症状のうちに診断されることもあるが、心不全症状が存在することが多い。定期的な受診と治療管理が必要。心不全が進行すれば予後不良である。心機能低下が進行すれば心臓移植の適応となることがある。有意な心機能低下があれば、妊娠・出産は難しい。生涯にわたる管理が必要。診断の手引き診断方法1)‌症状 易疲労、呼吸困難、体重増加不良など。2)‌胸部X線所見 胸部X線で心拡大を認める。3)‌心電図所見 左室肥大を認めることがある。ST低下など非特異的所見を認めることがある。4)‌心エコー所見 左房、左室の拡大と収縮低下、拡張障害を認める。心室壁の肥厚は認めない。僧帽弁閉鎖不全を認めることがある。5)‌MRI、CT、心筋シンチグラフィ 左房、左室の拡大と収縮低下、拡張障害を認める。心室壁の肥厚は認めない。心筋シンチグラフィで心筋灌流低下を認めることがある。6)‌心臓カテーテル、心筋生検 左室の拡大と収縮低下を認める。心筋生検では、心筋の変性、線維化を認める。7)‌遺伝子異常 細胞骨格や筋原線維を構成する蛋白質の遺伝子変異で本症が発生することがある。8)‌確定診断 心エコーで診断する。心臓カテーテル、心筋生検は小児では必須ではない。冠動脈起始異常の鑑別が重要であるが、注意深い心エコー検査で鑑別可能である。鑑別不能の際には、心臓カテーテル、造影検査を行う。代謝性心筋症の確定診断も重要である。当該事業における対象基準全A16. ‌拘束型心筋症告示番号20告示疾病名こうそくがたしんきんしょう 20 拘束型心筋症英語名Restricted cardiomyopathy概 要概念・定義 左室の拡張障害を認め、心不全を呈する疾患。左室の収縮能はほぼ保たれ、左室拡大はない。組織上は心筋細胞の肥大、線維化など非特異的所見を認める。しばしば家族性を呈し、筋原線維や細胞骨格蛋白の遺伝子異常を認めることがある。突然死、うっ血性心不全症状、不整脈などを呈する。治療困難で予後不良の疾患である。乳幼児など、若年者ほど予後は悪い。いったん有症状になると病態悪化の進行は速く、心臓移植の適応となる。病 因 トロポニンIなどサルコメアを形成する蛋白質の遺伝子異常や、デスミンなど細胞骨格蛋白の遺伝子異常に起因する場合がある。

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