小児慢性特定疾病
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4総 論又は遺伝子に変化を伴う症候群」を新設し、新制度では14疾患群となった。3)自己負担の変更 旧制度からのおもな変更点としては、小児慢性特定疾病の特性をふまえつつ、他の医療費助成制度における給付水準との均衡に留意して、自己負担割合が3割(就学前児童は2割)から2割に引き下げされた点があげられる。さらに、自己負担限度額が所得に応じて再設定され(最大で15000円/月)、外来診療と入院診療の区別をなくした点、また、受診した複数の医療機関等(薬局、訪問看護ステーションを含む)の自己負担をすべて合算したうえで自己負担限度額が適用されることとなった点、複数の患児がいる家庭の負担軽減を考慮して家庭内での自己負担の合算、負担限度額を人数で按分できるようになった点も大きな変更点といえる。一方、入院時の食事療養の費用については、2分の1を自己負担することとなった。 利用者負担が全額免除されている重症患者の認定は、旧制度でも定められていたが今回見直され、新制度における重症認定では、重症認定基準に適合する者の場合に加え、高額な医療費負担が長期的に継続する者(医療費総額が5万円/月(たとえば医療保険の2割負担の場合、医療費の自己負担が1万円/月)を超える月が年間6回以上ある場合)に該当する場合も、所得に応じて自己負担限度額が引き下げられることとなった。 さらに、人工呼吸器や体外式補助人工心臓等を装着している者については、前述の重症認定とは別枠で、所得とは関係なく自己負担限度額が最大500円/月まで引き下げられた。 なお、自己負担限度額については、指定難病制度と比較して、小児慢性特定疾病では半額に設定されている。これは、未成年の慢性疾病患者家庭の経済負担を軽減するという行政的配慮がなされた結果である。したがって、患児家庭の経済的負担軽減の観点からも、小児慢性特定疾病対策を積極的に利用されることを期待する。4)医療意見書の変更 医療意見書は、医療費助成の申請をする際に必要な事項を記載するものであるが、その記載事項は、小児慢性特定疾病対策の対象疾病と診断されていることの確認、疾病の状態と程度(対象基準)を満たしていることの確認を目的としている。 旧制度では、1疾患群につき1様式、11疾患群に対して11種類の医療意見書を用いて医療費助成の申請を行ってきた。しかし、上記目的を鑑み、新制度では、各疾病に専用の医療意見書、すなわち1疾病ごとに1種類、計760種類の医療意見書が用意されることとなった。 この変更に伴い、患者保護者が実施主体から医療意見書を受け取り、それを医療機関に提出して医師に作成してもらう方法での運用は難しくなった。新制度では、指定医が患者を診断し、小児慢性特定疾病情報センターウェブサイト2)から該当疾病の医療意見書をダウンロードして(もしくは医療機関で医療意見書を用意し)医療意見書を作成し、患者保護者に渡すという流れに変更が求められている。 さらに、新制度では、「出生都道府県市区町村」等が新たに共通項目に追加された。これは研究推進の観点から、個人情報をもたない小児慢性特定疾病データベースと指定難病データベースとを連携させて、縦断的で有益なデータベースを構築することを想定しての変更点である。また、自立支援事業との関係で、すべての疾病の医療意見書に「就学・就労」に関する項目も追加された。 なお、新制度では、申請の簡便化、審査・承認手続きの簡略化、医療意見書データの登録管理の効率化、医療意見書データに基づくデータベースの精度向上等の目的で、オンライン登録システムへの移行が検討されている。個人情報保護等の課題もあり、現在慎重に検討されている状況であるが、オンライン登録システムが稼動すれば医療意見書の作成、出力、ならびに登録、管理等が簡便になることが期待されている。5)指定医、指定医療機関の事前申請 旧制度では、医師であれば誰でも医療意見書を書くことができたが、新制度では、適正な医療費助成および医療の質を担保する観点から、医療費助成の申請のための医療意見書を作成する医師は、あらかじめ勤務先の医療機関の所在地を管轄する都道府県知事等に指定された「指定医」であることと定められた。 指定医の要件は、診断または治療に5年以上従事した経験を有する医師であって、①学会専門医資格を有する者、もしくは②都道府県等が開催する小慢指定医研修を修了した者のいずれかを満たしている医師であることとされた。なお、①については小児科専門医に限らず、関係学会の専門医制度による認定を受けている医師であればよいとされている。 指定医の職務としては、小児慢性特定疾病の医療費助成の支給認定申請に必要な医療意見書を作成することと、患者データ(医療意見書の内容)を登録管理システムに登録することとされており、これらは研究の推進と医療の質の向上といった観点からも重要な変更点である。なお、勤務先医療機関の所在地を管轄する都道府県等の長への申請が必要であることから、複数の医療機関にて診療を行っている医師については、各医療機関の所在地を管轄する都道府

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