小児慢性特定疾病
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5総 論県等の長への申請が必要となるので注意されたい。 また、新制度では、あらかじめ都道府県知事等に指定された「指定小児慢性特定疾病医療機関」が行う医療に限り、小児慢性特定疾病患者の医療費助成の対象とすることとされた。したがって、小児慢性特定疾病の医療費助成制度を利用する患者を受け入れる医療機関等(病院、診療所、薬局または訪問看護ステーション等)は、あらかじめ医療機関の所在地を管轄する都道府県知事等への申請が必要となる。なお、患児の受診等の利便性を優先し、指定医療機関には、旧制度にて診療を行ってきた医療機関が漏れなく指定医療機関となれるよう配慮がなされている。ただし、指定医療機関の申請に加え、前述の指定医の指定医番号を有する医師がいなければ医療意見書の作成はできないので注意が必要である。6)自立支援事業の拡充 新制度では、慢性的な疾病を抱える児童およびその家族の負担軽減および長期療養をしている児童の自立や成長支援について、地域の社会資源を活用するとともに、利用者の環境等に応じた支援を行うこととなり、児童福祉法第19条の22に基づき、各実施主体が取り組むことを事業として定められた。当該事業には、第19条の22第1項に定める「必須事業」と、同第2項に定める「任意事業」がある。 必須事業には、「相談支援事業」と「小児慢性特定疾病児童等自立支援員」について定められている。相談支援事業とは、慢性的な疾病を抱える児童およびその家族について、適切な療養の確保、自立心の確立、必要な情報の提供等の便宜を供与することで、日常生活での悩みや不安等の解消および小慢児童等の健康の保持増進および福祉の向上を図るものである。具体的には、「療育相談指導」、「巡回相談指導」、「ピアカウンセリング」、「自立に向けた育成相談」、「学校、企業等の地域関係者からの相談への対応、情報提供」があげられている。また、小児慢性特定疾病児童等自立支援員による支援については、慢性的な疾病を抱える児童等が成人後に自立した生活を営めるよう、成人期に向けた切れ目のない支援により、一層の自立促進を図るもので、自立支援員による各種支援策の利用計画の作成、関係機関との連絡調整等により、自立・就労の円滑化を図るという事業である。また、自立支援員は、各患者自立支援を行うのみならず、関係機関との連絡調整、さらに「慢性疾病児童地域支援協議会」に構成員として参加し、取組みの報告および意見陳述等を行うこととされている。 任意事業としては、「療育生活支援事業」や「相互交流支援事業」、「就職支援事業」、「介護者支援事業」、「その他の自立支援事業」といった小慢児童等の療育や自立促進に直接的に資するサービスの提供等が想定されており、各地域の実情に応じて整備することが求められている。7)‌小児慢性特定疾病の治療方法等に関する研究の推進 児童福祉法改正法では、第21条の4第1項において「国は、小児慢性特定疾病の治療方法その他小児慢性特定疾病その他の疾病にかかっていることにより長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成に資する調査および研究を推進するものとする。」と明記され、また同第2項において、難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保を図るための基盤となる難病の発病の機構、診断および治療方法に関する調査および研究との適切な連携を図るよう留意するものと記されている。 したがって、新制度では、医療費助成や自立支援等の福祉的な側面のみならず、研究の推進、すなわち、登録データの精度向上、登録データの研究への利活用、さらに研究成果の患児・国民への還元に積極的に取り組むことが求められている。この点をふまえ、前述した指定医による登録データの直接入力やデータ管理事業等によるデータの経年的な蓄積、難病制度の登録データとの連携のための共通項目の追加等の対策を新制度において講じてきた。対象疾病も増え、より多くの小児の慢性疾病が新制度の対象となったいま、さらなる登録データ等の研究への利活用が期待される。むすびにかえて 今回の見直しは、小児慢性特定疾患治療研究事業が開始されて以来、初めての抜本的な改正となったことから、新しい対象疾病ならびに対象基準等の理解について、混乱も多かったのではないかと推察する。当該事業の対象疾病を診断するに当たっては、小児慢性特定疾病情報センターウェブサイト2)に掲載されている「診断の手引き」を参考にすることと課長通知3)に定められている。本書は、この「診断の手引き」を書籍化したものであり、小児慢性特定疾病の診断、診療に広く利用されることを期待している。文 献1)厚生労働省社会保障審議会児童部会小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会:慢性疾患を抱える子どもとその家族への支援の在り方(報告).平成25年12月18日http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000- Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000032599.pdf2)国立成育医療研究センター小児慢性特定疾病情報室作成「小児慢性特定疾病情報センターウェブサイト」(http://www.shouman.jp/)3)「児童福祉法第六条の二第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める小児慢性特定疾病及び同条第二項の規定に基づき当該小児慢性特定疾病ごとに厚生労働大臣が定める疾病の状態の程度(平成 26 年厚生労働省告示第 475 号)」.雇児母発 1218 第1号.平成26年12月18日(なお、本通知は、平成27年9月30日に一次改正されたものである。)http://www. shouman.jp/pdf/contents/kojibohatsu_1218_1.pdf

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