小児慢性特定疾病
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13. 不整脈源性右室心筋症4慢性心疾患247例は予後は不良である。10年生存率は小児のほうが成人よりやや悪い。10年生存率は小児で80%、成人で50%の報告もある。死因は突然死が多い。小児では心不全死も多い。成人期以降の注意点 無症状のことが多いが、突然死がありうる。胸痛、動悸などの症状が出ることがある。左室内の狭窄の進行に注意する。有意な閉塞性病変があれば、妊娠・出産は難しい。定期的な受診と治療管理が必要。拡張相に移行すれば心臓移植の適応となることがある。生涯にわたる管理が必要。診断の手引き診断方法1)‌症状 易疲労、呼吸困難、胸痛など。無症状のこともある。2)‌胸部X線所見 胸部X線で軽度心拡大を認める。3)‌心電図所見 左室肥大を認めることがある。異常Q波、左側胸部誘導で巨大陰性T波などを認めることがある。4)‌心エコー所見 心室壁の肥厚、特に心室中隔の肥厚が著明である。心室中隔の厚さ/後壁厚の比が1.3以上を非対称性肥大とよび、本症の典型的な所見の1つである。左室の拡張障害の所見を認める。左室流出路狭窄があれば、流速の亢進を認める。僧帽弁閉鎖不全を認めることがある。年少児では右室流出路狭窄を認めることもある。5)‌心臓カテーテル、心筋生検 左室、心室中隔の肥厚を認め、左室の拡大はなく、心室収縮能は正常ないし亢進している。左室拡張末期圧の上昇を認める。左室内に狭窄があれば、引き抜き圧で、左室内に圧差を認める。心筋生検では、心筋の錯綜配列、心筋細胞肥大を認める。6)‌遺伝子異常 細胞骨格や筋原線維を構成する蛋白の遺伝子変異で、本症が発生することがある。7)‌診断 心エコー、心臓カテーテル、心筋生検で確定診断する。当該事業における対象基準全A13. ‌不整脈源性右室心筋症告示番号90告示疾病名ふせいみゃくげんせいうしつしんきんしょう 17 不整脈源性右室心筋症英語名Arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy or dysplasia概 要概念・定義 原因不明の右室心筋の変性、脂肪浸潤、線維化を特徴とし、右室の拡大や収縮不全、右室起源の心室性不整脈を呈する進行性の疾患である。不整脈と心不全に対する治療を行う。持続性心室頻拍や心室細動など不整脈に対する治療は、薬物療法、植込み型除細動器(ICD)、カテーテルアブレーションが考慮される。慢性心不全症状に対しては、抗心不全薬物療法がなされる。内科的治療に反応しない場合には、心臓移植の適応となる。病 因 右室心筋の脂肪浸潤、線維化が、外膜下からはじまり、心内膜側に広がり、貫通性となる。細胞骨格を構成する蛋白質、特にデスモソーム蛋白の遺伝子変異で本症が発生することがある。デスモソーム蛋白のplakophilin-2(PKP2)の遺伝子異常が多い。遺伝子異常が判明しない場合には、原因は不明といわざるをえない。疫 学 発生頻度は5,000人に1人といわれる。30歳前後での発症が多い。小児での発症は少ない。臨床症状 若年者の突然死の原因となる。動悸、易疲労など。無症状のこともある。診断の際の留意点1)‌理学的所見 特徴的なものはない。2)‌心エコー所見 右室に特異的所見である、瘤形成、肥厚した肉柱、突出(bulging)を認める。右室全体の収縮低下を認める。3)‌MRI所見 MRIが診断に有用である。治 療 不整脈と心不全に対する治療を行う。持続性心室頻拍や心室細動など不整脈に対する治療は、薬物療法、ICD、カテーテルアブレーションが考慮される。 不整脈に対しては、抗不整脈薬を投与する。β遮断薬やIII群抗不整脈薬(アミオダロン、ソタロール)が考慮される。 左心機能低下例、心停止蘇生例、心室頻拍の既往、

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