2236必携 脳卒中ハンドブック 改訂第3版
11/12

変を鑑別する.さらに,MELAS (mitochondrial my-opathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes)(本書「VII-F MELAS」参照)のように脳卒中類似症状を呈して急性期に脳梗塞と間違いやすい疾患や病態( stroke mimics)(表2)9)を十分に考慮し,適切な診察と検査を行い,これらの疾患を除外する必要がある.特に患者が若年者の場合は疑似脳卒中の可能性が高いので,より注意深く鑑別しなければならない(本書「III-A-17 画像検査で病巣が確認できない場合の考え方と対応」参照). MRAやMR灌流画像(MRP)を含めたマルチモーダルMRIをいつでも施行できる態勢が整っていれば,脳血管閉塞や脳組織の虚血を画像所見で確認でき,超急性期の脳梗塞診断の精度は向上する.文 献1) Adams HP, et al: Classification of subtype of acute ischemic stroke. Definitions for use in a multicenter clinical trial. TOAST. Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment. Stroke 1993; 24: 35-41.2) Caplan LR: Uncommon Causes of Stroke. 2nd ed. Cambridge univer-sity press, 2008.3) Plummer C, et al: Ischemic stroke and transient ischemic attack after head and neck radiotherapy. a review. Stroke 2011; 42: 2410-2418.4) Saito T, et al: Lipoprotein (a) concentration and molecular weight of apolipoprotein (a) in patients with cerebrovascular disease and dia-betes mellitus. Thromb Res 1997; 87: 527-538.5) Provenzale J, et al: Neuroradiologic findings in polyarteritis nodosa. Am J Neuroradiol 1996; 17: 1119-1129.6) 北川泰久:抗リン脂質抗体症候群と脳血管障害.柳澤信夫,他(編),Annual Review 神経.中外医学社,2004:139-151.7) Singhal AB, et al: Reversible cerebral vasoconstriction syndromes. Analysis of 139 Cases. Arch Neurol. published online April 11, 2011.8) Fugate JE, et al: Posterior reversible encephalopathy syndrome: clini-cal and radiological manifestations, pathophysiology, and outstanding questions. Lancet Neurol 2015; 14: 914-925.9) 高嶋修太郎:超急性期に脳梗塞と間違いやすい疾患や病態.Medicina 2006;43:215-217.における血栓塞栓症の原因となる.特に喫煙や動脈硬化の素因がある場合は長期間ピルを連用することで脳梗塞の発症リスクは高まる.また,妊娠中や周産期に前子癇状態あるいは子癇を併発し,高血圧,蛋白尿に加えて,溶血,肝酵素の上昇,血小板減少を伴う HELLP症候群やDICを合併することがある. 症候的には意識障害,痙攣,脳梗塞や脳出血を発症する.特に子癇では,著しい高血圧や腎不全に加えて,脳血管攣縮を伴うアンギオパチーの所見を認め,後頭葉を中心に白質の浮腫性変化および虚血性変化が可逆性に出現する 可逆性後頭葉白質脳症(posterior re-versible encephalopathy syndrome;PRES)8)を合併することがある.  片頭痛の病態として,以前は血管攣縮が主体と考えられ,片頭痛患者に脳梗塞が併発するのは当然のことと考えられていた.現在まで両者の関連を示す確証はなかったが,片頭痛患者では卵円孔開存(patent foramen ovale;PFO)の合併と脳血管障害の発症率が高いという報告もある.片頭痛のなかで,前兆として可逆性に片麻痺が出現するFHMがある.遺伝子解析において,19番染色体19p13にあるCaチャネル遺伝子の異常が証明されている.麻痺の程度は不全麻痺から完全麻痺まで様々で,顔面筋や上肢末梢の麻痺のみのこともある.また,発作中に麻痺側が交代することも報告されている.本症では造影剤の使用により血管攣縮が誘発されるので,脳血管撮影は禁忌である.画像所見で片麻痺に関連する虚血性病変が確認された場合は片頭痛による脳梗塞と診断する. 本書「VII-B 脳静脈・静脈洞血栓症」を参照. おもに両下肢に皮膚病変(livedo reticularis)を伴い,脳梗塞を繰り返す疾患で,原因や病態は未だ不明である.ほかに原因がなく,皮膚病変と脳梗塞が同時に認められる場合に鑑別する.抗リン脂質抗体が陽性の場合があり,病因として関連がある可能性もある. 急性期の脳梗塞の診断においては,まず頭部CTやMRIで脳出血や脳腫瘍などの出血性病変や占拠性病2片 頭 痛3脳静脈・静脈洞血栓症4 Sneddon症候群脳梗塞様の発作 7その他の脳梗塞221脳梗塞,TIAⅢ・解離性障害などの精神障害・てんかん発作後のTodd麻痺・中毒性疾患・低血糖や肝性脳症などの代謝性疾患・脳炎・感染症を伴う脳卒中後遺症・一過性全健忘(TGA)・MELAS・片麻痺を伴う片頭痛・Adams-Stokes発作・末梢性めまい・その他(高嶋修太郎:超急性期に脳梗塞と間違いやすい疾患や病態.Me-dicina 2006;43:215-217)急性期に脳梗塞と間違いやすい疾患や病態表2

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る