2236必携 脳卒中ハンドブック 改訂第3版
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性病変を認め,高血圧,腎機能障害,心肥大,心筋虚血,低汗症,脳梗塞を発症する.一般に脳梗塞は20歳以降に発症する.20〜30代では小血管の虚血性脳血管障害が生じ,40代では大・小血管の脳梗塞を生じることが特徴である. X連鎮劣性遺伝であり,おもに男性に発症するが,ヘテロ接合保因者の女性も,軽症ではあるが,様々な症状を呈する.診断にはα-ガラクトシダーゼAの酵素活性低下(正常の10 %以下.ただし,女性では判定困難)を確認し,遺伝子診断で確定する.現在では酵素補充療法により症状の進行を抑制することが可能である.若年者の脳梗塞で四肢痛,低汗症,被角血管腫,蛋白尿,心肥大のいずれかを認める場合は,まず酵素活性を測定し,次に遺伝子診断を考慮するべきである. 常染色体劣性遺伝形式を示し,アミノ酸の1つであるメチオニンの代謝経路にあるシスタチオニンβ合成酵素が欠損し,血液中のホモシステインおよびその前駆体であるメチオニンが著増し,尿中にホモシスチンが大量に排泄される(図2). 精神発達遅滞やてんかんを発症し,若年で著明な動脈硬化と血栓症を生じ,脳梗塞,心筋梗塞,肺塞栓症などを併発する.高濃度のホモシステインが内皮細胞を障害し,動脈硬化や血栓症を生じる.hホモシスチン尿症  外傷や頭蓋内の外科的処置のあとに血管攣縮が発現することがある.ほとんどの場合,血管壁への直接的な機械的損傷,あるいはくも膜下腔に血液が混入することに起因する.また,外傷により内頚動脈あるいは椎骨動脈に解離が発現する.交通事故などによる明らかな外傷がなくても,スポーツなどの運動により血管が損傷して動脈解離が発現することもある(本書「VII-C動脈解離」参照).外傷が重症の場合は播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coag-ulation;DIC)を併発して血栓症を起こす場合や,外傷により空気や脂肪などの組織片が動脈内に侵入して脳塞栓を併発することもある. 本書「VII-G CADASIL,CARASIL」を参照. X連鎖劣性遺伝形式を示し,ライソゾーム酵素の1つであるα-ガラクトシダーゼAが欠損し,その基質であるグロボトリアオシルセラミドが血管壁,平滑筋,種々の臓器や神経系に沈着する.幼年・青年期に皮下の被角血管腫(angiokeratoma)で発症し,周期的に四肢に灼熱痛や電撃痛を認めるようになる.疼痛は温度変化や運動で増悪する特徴がある.全身の血管に硬化e外  傷fCADASIL,CARASILgFabry病 7その他の脳梗塞215脳梗塞,TIAⅢ動脈解離による脳梗塞を発症したFMD症例50歳女性.車を運転中にじわじわとした後頭部痛が出現し,その後,下肢優位に左半身の脱力が出現した.頭部MRIの拡散強調画像(DWI)(a)では右前大脳動脈領域に新鮮梗塞巣を認め,fluidattenuatedinversionrecovery(FLAIR)像(未呈示)では同部位の脳溝に沿って高信号を認め,くも膜下出血(SAH)も確認された.脳血管撮影では右前大脳動脈(b)に解離性動脈瘤(矢頭)が確認され,両側内頚動脈(c,d)にstringofbeadssign(矢印)を認め,FMDと診断された.図1acbd

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