2253医療スタッフのためのLD診療・支援入門
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第2章 LDの具体的症状と診断・検査の実際37C│ 診察の実際  学習について相談を受けたら,どのように対応すればよいだろうか? 手順は一般の診療と変わりない.まず,訴えを詳しく聴取する.既往歴(発達歴)が重要であることも同じである.次に,症状を客観的に把握するための検査を行う.診断と評価を説明して,対応の仕方を整理して環境を整え,必要に応じて訓練や専門機関へ紹介する.1現症の問診 LDが疑われるのか,それとも他の原因による学習困難の可能性が高いのか,おおまかな見当をつける.訴えの内容を詳しく検討することで可能となる.学習困難の要因には,大まかに分けると次のようなものがあり,子どもの学習困難の状況がどれにあてはまるか想定しながら問診をとると,把握しやすい.a)学ぶための姿勢の問題 学校の規則や教師の指示に従うこと,単に「できる」だけではなく,「身につく」まで繰り返し練習を拒まないこと,誤りの指摘を受け入れることなどは,学習の基本となる姿勢である.多くの子どもにとってこのような学ぶ姿勢は半ば無意識のうちに身につくものであるが,しばしばASDやADHDの特性からうまく獲得できず学習に問題が生じる.(第1章C参照)b)注意集中障害 なかなか課題にとりかからない,途中でボーッとするなど行動上の問題,ケアレスミスによる読み間違い,計算間違いなど机上活動に現れる問題,一般的な知識の不足や課題の掘り下げが浅いことなど認知上の特徴など,様々な段階で不注意が学習に影響する.読み,書き,計算にミスが生じるとLDと混同されることが多いが,LDではなく注意集中に対する援助が必要となる.注意集中の問題はADHDやASDに広く認められ,学習習得を阻害する主な原因である.(第1章B,C参照)C診察の実際問診,既往歴,現症で,認知特徴や行動特徴と学習の関係を念頭におきながら,大まかな見当をつける.LD以外の発達障害の特徴にも留意する.この段階で診断する必要はない.知能検査は必須である.読字,書字,計算,数学的推論に問題がある場合,標準化された検査を行い,診断をつける.介入方法を構成するため,より詳しい検査が必要となる.専門的にかかわれる人との連携を模索する.Point!

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