2253医療スタッフのためのLD診療・支援入門
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38c)協調運動・筋緊張の問題,眼球運動 協調運動の障害は粗大運動や手先の不器用さとして,筋緊張の低下は姿勢が崩れやすいこととして現れる. 特殊な運動調節として眼球運動,特に衝動性眼球運動(saccade)があり,問題が生じると文章を読むこと,写し書きに困難をきたす. おもにDCDやASDで問題となることが多い.(第1章B参照)d)全般的な知的発達水準の問題 IDが学習困難の主因であることはよく目にすることで,比較的明らかな場合は従来から対応されてきた.しかし軽度のIDと知的境界域の子どもは,学習に関して何も配慮を受けていないことが多い.小学校の途中から学習習得に困難をきたすが,生活技能には問題ないことも多く気づかれにくい.ほとんどの場合知能検査は受けておらず,保護者がLDを疑って外来受診することもまれではない.(第1章C参照)e)LD 文字や単語のデコーディングとエンコーディングや読解,計算技能や数学的推論の習得と使用の困難を認める場合がある.学習に用いる基礎的な技能の障害のために学習全般の習得が広範囲に損なわれるが,その病態は特異的な認知機能障害が想定されることが特徴である. 実際にはLD以外の要因で生じる学習困難の頻度が高い.またLDが他の発達障害に合併していることも少なくない.「読むのが苦手」や「漢字が書けない」というようなおおまかな訴えではない具体的な困難点,いつから困難が明らかになってきたかなどの学習進展の経過,学習姿勢や学習以外の行動特徴を聴取しておくとよい.2発達歴 / 既往歴の聴取 就学前の発達の様子や以前の学習の状況を確認することが手がかりになる.a) 乳幼児期の全般的発達,運動発達,言語発達 乳幼児期の発達にめだつ遅れがなかったかどうかを確認する.特に,言語領域,運動領域の遅れは重要である.また,低出生体重や二分脊椎,水頭症など,高次脳機能の明らかな障害を認めないまでも中枢神経領域の問題が推定される場合には,全般的知能発達のほかに,領域特異的な発達の偏りの有無を意識して,既往歴をとる必要がある.b) ADHDやASDの特徴の有無 注意集中の状態やこだわり,融通のきかなさ,学習への姿勢につながる社会的認識など,ADHD,ASDの特徴は学習習得に大きな影響を及ぼす.幼少時からどのような行動・性格特徴がみられたかを把握することは,現時点で子どもが抱える学習困難の理解に役立つ.

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