2258これならわかる!小児科診療に活かせる遺伝学的検査・診断・遺伝カウンセリングの上手な進めかた
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2小児の遺伝性疾患の特徴 遺伝学的研究の進歩によってヒトの病気の多くは遺伝的な要因と関連していることが明らかになってきた.感染症やアレルギー性疾患,肥満など,明らかに外的要因によって生じる疾患においてすら,易感染性や免疫機序,メタボリックな代謝能力といった遺伝的に規定される内的要因が少なからず関連している.このようにヒトの疾患は,遺伝的に規定された内的要因と生活習慣や環境による外的要因との組み合わせで発症する(図1).壮年期以降に発症するAlzheimer病やParkinson病のような神経疾患においては,生まれつきの遺伝的な体質に加え,経年的な酸化ストレスの蓄積などにより,神経細胞の機能障害をきたして発症する.これに対して,出生後の生活習慣の影響が極めて少ない小児疾患の場合,外的要因の影響より,遺伝的な要因で発症する疾患が多いことは容易に理解しやすいだろう. Down症候群をはじめとする染色体異常症候群や先天奇形症候群などのなかには,出生直後から症状を示し,症状の組み合わせからすぐに診断される疾患もある.先天代謝異常症のなかには,見た目には判断できないものの,血液中の代謝産物にはすでに一定の変化が現れており,Guthrie検査などでいち早く異常を検出することができる疾患もある.その一方,知的障害の場合,乳児期早期には判断ができず,ある一定の年齢に達してからでなければ診断ができないものがある.家族性若年糖尿病(maturity-onset diabetes of the young:MODY)などは当初は全く何の症状や所見がなくとも,ある時期に突然症状を発現することがある.このように,遺伝的な疾患といえども,疾患によって臨床診断される年齢はまちまちであり,診断を確定するために必要となる遺伝学的検査を実施する時期も様々である.生殖細胞系列の変異 では,われわれは遺伝性疾患というものをどのように捉えればよいだろう.遺伝性疾患を科学的に定義するとしたら,生殖細胞系列における遺伝情報の担体によって次世代に伝えられうる情報の様々な変化により,個体に何らかの症状をきたした状態のこと,とでも定義できようか.この場合の遺伝情報の担体は,核内に格納されたゲノム以外にミトコンドリア遺伝子がある.後述するが,核内のゲノムは,検査方法によって染色体として検査対象とする場合や,DNAとして扱う場合があるが,ミトコンドリア遺伝子はDNAとし1遺伝学の基礎知識総 論❶遺伝学的検査の概要

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