2263ダウン症児の学びとコミュニケーション支援ガイド
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6❶ 合併症としては,先天性心疾患をはじめ,消化器疾患,耳鼻咽喉科疾患,整形外科疾患,血液疾患,内分泌疾患,眼科疾患,神経/精神疾患などがみられる.1 先天性心疾患 先天性心疾患の合併は非常に多く,約50%にみられます.そのなかでも房室中隔欠損症が多く,そのほか心室中隔欠損症,心房中隔欠損症,ファロー四徴症と続きます.胎児心エコー検査によって合併する心疾患を早期に診断し,出産後の手術の準備を十分に行うことができます.心疾患の有無にかかわらず,肺高血圧を示すことが多く,利尿薬を服用することも多いようです.この肺高血圧をもつ場合にRSウイルス感染症に罹患すると,重症化することが多く,近年はそのモノクローナル抗体であるパリビズマブの投与が保険適用になり,重症化する頻度はかなり低下しました.心臓手術も積極的に行われるようになり,成績も向上しています.2 整形外科的疾患 第1頸椎(環椎)は第2頸椎(軸椎)の軸突起との間に靭帯で結合し,首の可動性をもたせながら支持していますが,靭帯の結合がゆるく不安定性を示すケース(環軸椎亜脱臼)が約20%にみられます.さらにそのうち,脊髄が圧迫されているケースが数%にみられます.頸部に急激に衝撃が加わった場合に,脊髄を損傷して麻痺を起こすことがありますが,とくに筋肉の低緊張が強い場合に気をつける必要があります(図1).また,外反扁平足を示すことが多く,足のアーチ形成がみられないと,疲れやすかったり,転びやすかったりします.側彎,股関節脱臼などもみられるため,とくに歩行後には整形外科医の診察が必要になります.3 白血病 ダウン症における白血病発症リスクは,非ダウン症に比較して10~20倍高いとされています.しばしば新生児期に一過性異常骨髄増殖症(transient abnormal myelopoiesis:TAM)という特徴的な血液疾患がみられます.これは約20%が早期死亡に至りますが,自然寛解することでもよく知られています.しかし,TAM寛解例のうち,約20~30%において幼児期に急性巨核芽球性白血病(acute megakaryoblastic leukemia:AMKL)を発症し,さらにそのうち10~20%は予後不良な経過をとります.TAMの症状では,著明な肝腫大と白血球増多がみられ,幼児期のAMKLでは白血球増多,貧血,血小板減少などがみられます. またダウン症では固形腫瘍(腎臓や副腎などにできる小児がん)の発生頻度が低いことがわかっていますが,最近,その理由が3コピーある21番染色体上のDSCR1遺伝子とDYRK1A遺伝子によっ3さまざまな合併症・健康管理A ダウン症児の特徴と育ちを理解する

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