2263ダウン症児の学びとコミュニケーション支援ガイド
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73.さまざまな合併症・健康管理1総 論て説明されています.2つの遺伝子がカルシニューリン経路を抑制して血管新生を抑制し,腫瘍増殖を抑制するため固形腫瘍が発生しにくいと考えられています1).4 内分泌異常 ダウン症でみられる内分泌異常は甲状腺機能低下症がほとんどです.このうち,新生児マス・スクリーニングで発見されるクレチン症では,体重増加不良,成長障害,活気の低下,便秘などがみられます.小学生くらいからは自己免疫性のものが多くなり,甲状腺自己抗体は年齢が上がるほど陽性率が高くなり,やがて甲状腺機能低下症(橋本病)となります.この自己抗体が出現してくると,毎年血液検査をする必要があります.症状の出現はゆっくりで,年長児の成長障害は,身長の伸びが止まるのに対し体重は増加するため,ダウン症児の成長曲線を利用すると発見することができます.その他に甲状腺機能亢進症(Basedow病)もみられますが,これは発症が急激で,暑がったり,発汗が多くなり,多動,易刺激性(精神的不安定),体重減少などがみられます. また,成長ホルモンの分泌が弱いため,さらに低身長になる場合があります.ダウン症児の成長曲線を利用して発見できます.5 消化器疾患 消化管閉鎖・狭窄などがみられます.鎖肛や食道閉鎖,十二指腸閉鎖では,出生早期に診断がつきますが,狭窄の程度が軽ければ新生児期には症状がありません.直腸部の狭窄(Hirschsprung病)では,しつこい便秘として症状が続きます.十二指腸狭窄では,胃に食物が停滞する時間が長く,ずいぶん時間が経っても嘔吐することが多く,それをきっかけに診断がつくことがあります.6 耳鼻科的疾患 感音性の難聴を認めることがあり,片側性や両側性のこともあります.新生児期のABR検査などで発見されることがあり,補聴器装着で反応性は向上します.また,乳児期には急性中耳炎に繰り返図1 環軸椎亜脱臼(a)正常児の頸椎側面単純X線写真.(b)下肢の麻痺を起こしたときのX線写真.環椎が軸椎前方へ偏位している(→).(c)麻痺時のMRI.脊柱管内の脊髄が環椎後弓と歯突起間で挟まれている(→).bca

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